「Baskerville FAN-TAIL the 6th.」 VS. Sou-Kyo
その後、築野は「くれぐれもお願いします」と言い残して教会を去った。クーパーの手には彼から託された稲崩が一振り。
教会の裏手でゆっくりと刀を抜き、両手で持つ。それから斬り下ろし、斬り払い、片手突き、と教本通りの演武をしてみる。
元々日本刀は軽い物だが、この稲崩は更に重さを感じさせない。軽やかだが、実に力強い。
(確かに彌天は名刀と言って差し支えない物だが……やはり霊刀と言われるだけの事はあるかもしれない。彌天を遥かに超えた品だ)
日本刀は、大雑把に「大太刀(おおだち)・野太刀(のだち)」「打刀(うちがたな)」「小太刀(こだち)」「脇差(わきざし)」の四つに大分される。
素人目にはどれも特徴的には同じで、刀身の長さで区別しているような物だ。
そして、そのどれもが「斬る」事に優れ、強靱かつ軽量。
いわゆる西洋の標準的な長剣が1.5〜2.5kgなのに対し、一般的な打刀ですらその半分程の重さしかないのだから。
鋭い刃を目標に当て、そのまま押すか引くかして初めて驚異的な切れ味を発揮する。
まさしく「速さ」を活かして「斬る」戦法に向いている武器だ。
そうした事を最大限に活かした技の一つが、クーパーの得意とする抜刀術なのだ。
鞘に収めて目を閉じ、ゆっくりと抜刀術の構えをとる。気持ちを落ち着け、大きく息を吐く。その時、後ろに人の気配を感じた。
「……セリファちゃん」
構えを解いて後ろを振り向いたクーパーの視線の先には、泣きそうな顔のセリファがぽつんと立っていた。
視線は彼の方を向いているものの、視点はここに非ずといった雰囲気もある。
「どうしました? もう日が暮れます。家に帰らないとグライダさんやコーランさんが心配しますよ」
いつも通りの笑顔で微笑むクーパーの所にセリファがとことこと歩いてくる。
「クーパー。こわくないの? たたかうんでしょ?」
彼は、心配そうにしているセリファの頭をポンポンと叩き、静かに言った。
「……もちろん恐いですよ。誰だって、戦いは恐いです」
「クーパーも、こわいの?」
そう言うと、クーパーは切り株に刺さったままの鉈を持ってきた。
もちろん彼の教会には電気もガスも完全完備しているのだが、彼の趣味で半分くらいは薪を使っているのだ。
クーパーは、危なくないように刃先を地面に突き立ててから言った。
「持ってみますか?」
何気ないその言葉に、セリファの顔がこわばった。セリファには、料理で使う包丁の化物にしか見えないし、クーパーがこれで薪を割る所は何度も見ている。太くて固い薪が、いとも簡単に割れていく様は、セリファもハッキリと覚えている。
だが、その鉈を持った事も触った事もなかった。
セリファは恐る恐るといった感じで両手で柄を掴み、ゆっくりと持ち上げてみた。ずしりと重い鉄の刃物の感触が彼女の両腕に伝わってくる。セリファはすぐに鉈を元通りに地面に刺すと、不思議そうな顔でぽつりと言った。
「おもかったよ?」
その答えを聞いて、今度は手に持った稲崩を持たせる。日本刀の方ならば何回か持った事はある。もっとも、さすがに鞘から抜いた事はないが。
「うん。こっちはかるいよ」
予想通りの答えにクーパーはにこりと笑い、
「実はですね。どちらもそれ程の重さの差はないんですよ。鉈の方は、重さの殆どが刃の部分に集中しているので、バランスが悪いんですよ。ですから重く感じ、振り回すのには向いていません」
クーパーの答えにセリファが驚く。彼は、セリファから稲崩を受け取ると、
「この日本刀という武器は『鉈の重さに剃刀の切れ味』と評されている武器なんです。バランスをきちんと考えて作られていますからね。『斬る』という使い方をする武器の中では、おそらく世界最高峰でしょう」
セリファは今まで自分が持っていた日本刀という武器を、心配そうに恐れの混じった目で見ている。
「こんな武器で戦うんです。恐くない訳がありません。ですが、恐さに耐える事はできます」
そう言って振り向き、沈もうとしている夕日を眺めている。
セリファはグライダのぬいぐるみを背負ったまま、クーパーの背にこつんと額を当てた。それから、どちらも一言も話さない静かな時間が流れる。
「……クーパー。クーパーは強いよね?」
やはり泣きそうな声で、セリファが尋ねた。振り向いたクーパーは静かにセリファの頭を撫でてやりながら、
「強いかどうかは判りません。ですが、鍛えてはいるつもりです」
諭すようで優しい。それでいて強さを秘めた彼の言葉が、セリファの中に染み込んでいくかのようだった。
ク−パーは、セリファの肩に手を置き、彼女の身長に合わせてしゃがむと問いかけた。
「不安なのですか?」
セリファが弱々しくうなづく。
「心配なんですね?」
再び首を倒す。
「大丈夫ですよ、ボクは。安心して下さい、セリファちゃん。約束します」
彼女を優しく抱き締め、静かにそう言った。


コーランは、ナカゴに教えてもらった、魔族のみが判る魔術的な信号を出した。
一日に数度、街の上空に稲光に似た電光が一瞬駆け抜ける。それがメッセージになっているのだ。
そうやって砂浜に来るよう伝言を出してから丸一日経ち、グレーの肌の剣士・創挙が姿を現わした。
前に会った時と同じように背中に細長い包みを背負い、手には抜き身の西洋風の長剣が握られている。
クーパーの方もいつも通りの略式の神父の礼服だ。
左手に納刀したままの彌天を持ち、礼服の上からしているベルトには、稲崩の方を差している。日本刀の使い手は、基本的に刀を二本腰に差す事が多い。
皆が見守る中、クーパーと創挙の視線が重なり合う。しばらく沈黙が続いた後、クーパーの方から口を開いた。
「事情は、築野さんからお聞きしました。お気持ちはお察ししますが、ボクもただ黙って貴方に斬られるわけにはいきません」
クーパーの声を目を閉じて聞いていた創挙だったが、ふるふると全身を震わせ、
「間違いない。父の仇に間違いない。間違いないぞぉっ!」
カッ、と目を見開き、歓喜の声をあげる。それから持っていた剣の切っ先をクーパーに向ける。
「今こそ父の仇を討たせてもらうっ!」
すさまじい気合いを表に出す。気の弱い者ならば、それだけで気を失いそうな迫力だ。直後、足場の悪い砂浜を駆け、間合いを詰める。
キィン!
カン高い金属音が響いた時には、創挙の剣の切っ先を刀の柄で受けとめているクーパーの姿が見えたのみ。バーナムやグライダ、そしてコーランでさえも、創挙がテレポートした様にしか見えなかった。
そして、残像が浮かびそうなスピードの突きを中心に薙ぎ、払い、と次々と攻撃を繰り出す創挙。
「なっ、何てぇスピードだ」
「あんなの食らったら、あたしなんか一撃でやられるわ……」
バーナムとグライダも青ざめた顔でその光景を見ている。それほどまでに素早い連続攻撃だった。
「あれ……魔法は一切使っていないわね」
コーランの言葉に皆驚く。築野ですら、
「……あれは、岩田秀英流剣術最速の奥義・千手刃(せんじゅじん)。いや、それすらも超えている……。あの様な鬼神の如き師匠は、これまでに見た事がない。師匠は、一体どうされたのだ」
と、震える声で呟き、驚きを隠せない。
「どうやら、本来の魔族に戻った様ね。普通の人間にできる芸当じゃない」
コーランが淡々と呟く間にも、目にも止まらぬ創挙の猛攻を、クーパーは刀を鞘に収めたままで防ぎ、避けるのみだ。着ている略式の礼服の端に、次々と切れ目が入る。
「なぁにやってんだよ、クーパー! とっととブッタ斬っちまえ!」
イライラが押さえられないバーナムは砂浜に拳を叩きつけ、彼に向かって怒鳴る。
その時、セリファがいきなりグライダの胸に顔を埋めた。小さく嗚咽が聞こえる。
「おねーサマ。クーパーはだいじょーぶだよね? ぜったいかつよね?」
グライダは泣きじゃくるセリファの頭をそっと撫でながら、自分に言い聞かせるように言った。
「セリファは、クーパーの事、信じてる?」
セリファは顔を上げ、コクン、と小さくうなづく。それを見たグライダはニッコリと笑うと、
「それじゃあ、ちゃんと最後まで見ていなさい。クーパーは、大丈夫って言ってたんでしょう?」
「うん。でもぉ……」
「『世界は広い』と言っても、クーパーがどれだけ強いかは、あたし達が一番良く知ってる。そうでしょう? だったら、クーパーを信じなきゃ。『絶対大丈夫』って」
「……うん」
セリファは自分の服で涙を拭いて、戦う二人の方を見た。そして、防戦一方のクーパーに向かって、思い切り大きな声で叫ぶ。
「クーパー! がんばってーっ!」
その時、絶え間なき連続攻撃の刹那ほどもない隙間を斬り裂く様にクーパーの刀が一閃!
創挙は脇腹から肩を大きく切り裂かれて宙を舞う。クーパーも肩口に傷を負い、刀を振り上げた状態のまま肩で大きく息をしている。
その直後、創挙が砂浜に叩きつけられた。
しかし、斬られた痛みを(少なくとも表面には)全く出さずに立ち上がると、
「まさか、この技を破るとは。驚いたぞ。しかし、残念だったな。この我の血は強酸性でね。その刀は、もはやなまくら以下」
それから、切っ先についた血を嬉しそうに見て、
「おまけにこの剣は、血を吸えば吸うほど強くなる魔剣。これまでに何百人もの血を吸わせて、無敵の力を持つ剣となった。この剣さえあれば、もはや我が勝ったもどうぜ……」
パキン……。
創挙の台詞の途中で、その魔剣が真っ二つに折れた。創挙は折れた剣の切り口を見つめ、
「馬鹿な! この剣が折れるとは……。だっ、だが、そちらの刀も……」
慌てて創挙がクーパーの持つ刀を見ると、酸でボロボロになるどころか、今まで通りの輝きを保っているではないか!
「この刀には、亡き作り手と使い手の魂が込められています。そう簡単に壊れはしません」
クーパーは血を拭って刀を収め、口を開いた。
「ボクの使う石井岩蔭流は、古代武神・岩蔭(いわかげ)の技を、開祖・石井茂吉(いしいもきち)が受け継いだ、いわば神の技。貴方の岩田秀英流も、そこから枝別れして生まれた流派でしたね」
クーパーが説法でもするような調子でそう語りかける。
「ですが、今の貴方は魔族としての天性の能力に自惚れて、技の形だけを真似し、技の本来持つ力を引き出せていません。それでは、何度やってもボクには勝てませんよ」
すると、創挙は折れた剣を無造作に投げ捨てた。そして、背中に背負ったままの細長い包みを解く。
「ああっ、あの刀は!」
何かわかった築野が驚きの声を上げる。
「これは、我が流派に代々伝わる神刀・稲泯(いなみん)。稲妻をも滅ぼすというその威力。見せてくれようぞ」
言いながら刀を抜いて鞘を捨て、今度は刀を順手に持ったまま刀を収めるように左腰に下ろした。剣道でいう脇構えだ。
「神父殿! その刀とまともに斬り結んではいかん!」
築野の叫びが合図となったのか、創挙はさっきよりも速く一気に間合いを詰めてきた。
クーパーも「何かある」と思ったのか、とっさに腰に差した稲崩の方を抜いて受けとめるが、逆にクーパーの方が天高く弾き飛ばされてしまった!
「クーパー!」
「神父殿!」
皆の悲痛な叫びが響く中、弾き飛ばされたクーパーの体は海に叩きつけられた。
「皆、あの技にやられたのだ。稲泯の刃を受けられるのは、対となった稲崩のみ。我は技量不足ゆえに傷を負ったが、神父殿ならばとあるいは思ったのだが……」
築野の声が震えている。自分の剣士としての命を奪った技を再び目の当りにして。自分と同じ運命となってしまった事を恨んで。
しかし、創挙の方はもう一度刀を振りかざし、
「さっさと出てこい! 大して効いていない事はわかっているぞ!」
そう叫びながらクーパーが落ちた辺りに剣風を叩き込む。
クーパーは立ち上がりざま手にしていた稲崩を手放し、彌天による抜刀術の剣風でその剣風を相殺すると、創挙の方を睨みつける。
その彼の無事な姿に安堵の息を漏らす一行。
「……なるほど。築野が稲崩を渡していたのか……」
創挙は、クーパーの被害が裂かれた上着と斬られたベルトだけなのを見て、小さく呟いた。それから、波打ち際に落ちていた稲崩の鞘を踏みつけると、
「確かに岩田秀英流は、石井岩蔭流より派生したもの。だが、抜刀術しかない石井岩蔭流が、鞘のない状態でどう闘う気だ? 稲崩でなければ、この刃は受けられんぞ」
創挙の顔に、勝利を確信した笑みが浮かぶ。 だが、クーパーに動じた様子はない。
「貴方は、一つだけ勘違いをしています。ボクは、石井岩蔭流が抜刀術しかない流派とは、一言も言った覚えはありませんよ」
創挙の驚きを知ってか知らずか、彼は更に続けた。
「抜刀術以外は難しいものが多いので、あまり覚える人がいないのです。ちゃんと存在していますし、ボク自身も、抜刀術が得意というだけです」
そう言って彌天を自分の前に突き立ててから稲崩を拾い、軽く振って水を切る。それから立てていた彌天を左手で持ち直す。
何と、クーパーは二刀流の構えを取った。
「貴方が本気を出してきた以上、こちらもそれ相応の闘いをしなければなりませんね……」
その構えに皆驚く。
「え? クーパーって、二刀流もできるの?」
グライダは、自分も二刀流だから、それがどれだけ大変なのかわかっているつもりだ。
二刀流とは剣を両手に持てばいいという訳ではないのだから。
「しかし、稲泯の刃を受けられるのは稲崩のみ。実質一刀流と大差ない……」
築野も不安の表情を隠せない。
「でも、あれがハッタリとはとても思えない」
心配そうに対峙する二人を見つめる。クーパーの全身から静かにオーラのような物が立ち上っている。
「いきますよ。石井岩蔭流が抜刀術だけの流派ではない事を証明してみせます」
クーパーは、海の上を滑る様なスピードで走り、右で突きを入れる。
創挙もそれを見切って紙一重でかわすが、クーパーが続けざまに左の払い、右の打ち込み、と先程の創挙のお株を奪う様な連続攻撃!!
それもだんだん早くなり、次第に創挙の体にうっすらと傷が浮かぶ様になってきた。かわしきれなくなってきたのだ。
そして、ついに稲崩の突きを左肩に受けた。
「師匠!」
築野の叫びがむなしく響く。しかし、創挙は左肩に刺さったままの稲崩の刃を握ると、そのまま稲泯をクーパーに振り下ろした。
そして、高い金属音が辺りに響く。
「ああっ!」
驚いたのは一行だけではない。刀を振り下ろした創挙が一番驚いていた。
なぜなら、稲崩でのみ受けられる稲泯の刃を、彌天の方でしっかりと受け止めていたからだ。
「そんな筈は……ある筈がないっ!」
そのままギリギリと刃の擦れる音がし、力比べになる。
「これが、ボクが先程言った『技の形だけしか真似していない』という証拠です。それでは、先程の様にノイエハース流の剣技と融合させても意味がありません」
「黙れ黙れ黙れっ!」
創挙はより力を込めて押し返すが、クーパーの方はまるでびくともしていない。
「……やむを得ませんね」
クーパーは静かにそう言うと、いきなり彌天を跳ね上げ、稲泯を頭上に弾き飛ばす。
その一瞬の隙に彌天を反対の肩にも突き刺したかと思うと、刀を手放して創挙の体を蹴って高く飛び上がり、空中で稲泯を掴んで、落下の勢いを加えた一撃を脳天に加える!
着地したクーパーも一撃を受けた創挙もピクリとも動かなかったが、やがて、
「……無念だが……見事だ。技の名を、教えてはくれまいか」
「……石井岩蔭流三刀術(さんとうじゅつ)奥義・参刃殺(さんじんさつ)です。貴方を止めるには、もう、こうするしかありませんでした……」
創挙の体がゆっくりと砂浜に倒れた。
クーパーは創挙のそばに稲泯を突き立てると、その体にささった彌天だけを引き抜き、血を拭って鞘に収めた。
「師匠……」
築野が創挙のそばに正座し顔を伏せていた。
「クーパー……殺したの……?」
コーランが彼の耳元で小さな声で尋ねた。
「……いえ。最後のは峰打ちです。魔族の耐久力でしたら、ゆっくり休ませればすぐに回復しますよ」
「おいおい。そんな事したらまた来るんじゃねーのか?」
「大丈夫だと思いますよ、バーナム。一度負けた以上、自分の腕を磨いて、確実にボクに勝てる技量と自信を持つまで、決してボクの所へは来ないと思います」
足元に倒れている創挙を見下ろしたまま静かに言った。


確かに、クーパーの言った通りだった。
創挙は築野と二振りの刀と共に、修業の為故郷に帰って行った。その修業が済むまで、他の使い手や石井岩蔭流道場にも手を出さないと誓いさえした。
「変なの。あれだけ仇って騒いでたのに」
「グライダ。彼だって、今、仇を取るのが無意味な事くらい理解しているわ」
「それじゃどうして?」
諭す様なコーランの言葉に慌てて聞き返す。
「……それでも、父親を殺した奴が憎い事には違いないわ。その矛盾した心を抑えるには、何でもいいから行動に出るしかなかったのね」
「……しっかし、その創挙の仇とやらも、何百年後にこんな事になるたぁ、思ってなかったろうなぁ」
バーナムの言葉にうんうんとうなづくグライダとセリファ。
「でも、石井岩蔭流が元々神様の技っていうのは初耳ね。強いのもうなづけるわ」
グライダが感心した様に言うと、
「ねえ、クーパー。あたしにも何か簡単そうな技教えてよ」
「えっ!? ダメですよ。いくら何でもできるわけがないじゃないですか!」
「そんな事言わないでさぁ。クーパー、この通りだから」
グライダが必死に彼に懇願するが、いきなり、
「ダメなの! クーパーは、これからセリファとデートなの!」
グライダとクーパーの間にセリファが割って入る。
「デート!?」
皆の目が丸くなった。セリファは得意そうに胸をはって、
「やくそくしたんだもん。おわったらデートするって。ねー?」
「はいはい。セリファちゃん。わかっていますよ」
同意を求めるセリファに、クーパーも笑顔で応じる。
「でも、デートって、どこに行くの?」
コーランが苦笑いのまま尋ねる。
「あのね。クーパーのおりょーりを、いーっぱい食べるの」
「それ、デートって言うの?」
グライダもあきれ顔だ。
「いいんじゃねーか。あいつロリコンだし」
バーナムが「我関せず」という態度で言った。クーパーも困った顔で、
「別に、そういう訳ではないんですけどね」
と答えるのみだった。
「それでセリファ。何を作ってもらうの?」
グライダが彼女の頭をポン、と叩いた。すると、彼女は満面の笑みを浮かべ、
「お肉いーっぱいの、カレーライス♪」

<FIN>


あとがき

98年冬号です。実際の発行は99年春でしたけど。

お待たせ致しました! ナンダカンダで一番人気がある(らしい)クーパーが主人公の話です。彼絡みの設定がようやく発表できました。少しだけですけどね。
でも、益々訳判らない人になってしまった気がするのは管理人だけでしょうか??

この話、あえてサブタイトルをつけるのなら「デートと刀とカレーライス」でしょうか。出だしとオチにしっかり「デート」「カレーライス」が登場しています。
珍しく管理人自身がお気に入りの話です。
やはり、子供には野菜よりお肉のカレーの方がウケが良いようです(シーフードにしようか迷いましたが)。
この話は、どうしても入れたかった「セリファとクーパーの会話」を追加致しました。でも、これを入れると枚数オーバーしちゃうんで、泣く泣く削ってたんです。
別にこの二人をくっつけようという気はないんですけど、何となくお似合いかな、くらいには思ってますし。


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