「Baskerville FAN-TAIL the 35th.」 VS. OQUI ISSY
戦況は、正直に言ってあまり良くなかった。
いくら力が衰えているとはいえ神は神。特殊な能力を持つバスカーヴィル・ファンテイル達でも相手をするには分が悪すぎる。
だがそれは既に分かっていた事。それでも戦わねばならないのだ。
基本はバーナムの武術・四霊獣(しれいじゅう)龍の拳の技で。魔法ではなく「気」を使うので魔法吸収の影響を受けないからだ。もちろんグライダも二振りの魔剣・聖剣を駆使して接近戦を試みている。
その辺はクーパーが言っていた通りだ。
しかし相手が神ゆえに「効果はあるが決め手に欠ける」というのが正直なところだ。
事実、龍の力と同等の四霊獣龍の拳でも、触れただけで相手を焼き尽くす魔剣レーヴァテインの刃がかすったのに、少し服が焦げた程度で済んでいる有様なのだ。
そんな戦いの中無情にも放たれた「試射」。本来の威力の三割もないとオクヰ・イシは言ったが、それでも山脈一つなら軽く吹き飛ぶ威力らしい。
こちらとしては「試射」の被害が少しでも少ない事を祈るしかない。
『降伏し、我を崇拝するのであれば、命は取りませんよ』
オクヰ・イシの余裕の笑み。しかしその笑みに慈愛や安らぎといった正の感情は微塵もない。あるのは邪悪としか形容できない雰囲気だけだ。
「こうなったらやるしかねぇか」
バーナム最大の奥の手。それは自身の心臓の位置に埋め込まれた青白い輝きを放つ水晶玉だ。この力を使うと彼は龍人へと変身できるのだ。
龍人になれば龍の力をフルパワーで使う事ができるようになる。
しかし身体にかかる負担が大きく長時間戦う事はできないし、時間切れを起こしたらそれこそ打つ手がなくなる。
とはいえこのまま長引かせれば大変な事になるのは明白。危険を承知でやるしかないか。
バーナムがそう決意した時だった。グライダがオクヰ・イシの攻撃を避けきれず地面に叩きつけられたのだ。
グライダはあらゆる魔法が効かないという特殊体質なのだが、魔法そのものは効かずともその余波まではその限りではない。その余波も生半可な魔法より遥かに威力が高い。喰らえば大変な事になるのだ。
その時、グライダが持っていた親の形見らしい水晶玉が転がり出た。しかもオクヰ・イシの方に転がっていく。
この水晶玉は「盤古(ばんこ)」といって莫大な魔力が封じられている宝玉だ。オクヰ・イシは満面の笑みを浮かべ、
『ちょうどいいですね。この魔力も戴くとしましょう』
「! 待ちなさい!」
何かに気づいたコーランが止めに入ろうとしたが、それよりも早くオクヰ・イシが盤古に触れた瞬間、
ばじゅうぅん。
耳障りな音と同時に何かが焦げる嫌な臭いが漂う。
『な、な、な、な……』
オクヰ・イシの満面の笑みが一気に苦痛に歪んだものとなり、何が起こったのか分からないと言いたそうな表情になっている。
盤古に触れた右手はもちろん、そこに繋がった右腕右肩、そして右胸の一部が一瞬で吹き飛んでしまっているからだ。
衰えたとはいえ神々が持つ回復力も全く働いている様子がない。
その時、地面に転がったままの盤古からゆらりと煙のようなものが立ち昇る。そしてその煙が何かの形へと変わっていく。
「ノリール……」
コーランの口から漏れる、親友でありグライダ、セリファ姉妹の母の名前。
そんな彼女の姿となった煙が、オクヰ・イシから盤古を——いや、我が娘グライダを守るかのように両腕を広げて立ちはだかっていたのだ。
「母さん……?」
グライダが写真でしか見た事がない母の姿に唖然としている。無理もないだろう。だがそこは鍛えられた戦士の端くれ。このチャンスを逃すまいと腰の短剣を引き抜いた。
この短剣は「纏気(てんき)の剣」と言って、気や魔法を注ぎ込んで魔法剣として使うものだ。
そしてこれは亡き父・ドムの形見。写真でしか見た事がない父に、
(父さん。力を借りるよ)
短剣をわざわざ両手で持ち、高く掲げ、いつもの剣を出す要領で剣に魔力を注ぎ込む。
右手に宿る炎の魔剣と左手に宿る光の聖剣の相反する力が纏気の剣に流れ込む。
ただの短剣がまるで急成長する蔓のように長く、太く伸びていき、あっという間に両手持ちの大剣並みのサイズにまで巨大になる。
しかし剣の「成長」は止まらない。握りは太さと長さを増していき、剣の刃はそれ以上に太く、分厚く、そして何より長くなる。
それはまるで巨人が持つ武器だ。しかもその姿は琥珀色に輝く刀身の両刃の大剣。
知る人ぞ知る、二つの魔力が融合した神のための剣・オルタネイトのようでもあった。
当然その巨大さはグライダの腕力では支えきれずにぐらりと倒れてしまう。
そしてその先に、苦しげに呻くオクヰ・イシが、そして世界を滅ぼす大砲の砲身があった。
ズゴドゴゴンッ!
物凄い音と共に大砲の砲身がいとも簡単に斜めに斬り裂かれた。もちろんオクヰ・イシの身体も。あっけない幕切れとはこの事だ。
グライダは当然だが、見守っていたコーランやバーナムもこの成り行きには思わず動きを止めてしまう。
だが運でも偶然でもたまたまでも勝ちは勝ち。さしもの神でも身体を真っ二つにされては生きていられよう筈がないのだ。
後は台座に埋め込まれたセリファを救出するのみ。
だった筈なのだが……。
異変に最初に気づいたのはコーランだった。
「グライダ、アンタ何やらかしてんの!」
そうは言うものの、グライダを無視して大砲に駆け寄って行く。意外な事にバーナムもだ。
「テメェが大砲ブッた斬ったせいで、貯め込んでた魔力が暴発寸前だ!」
本来なら砲身から飛び出す筈の膨大な魔力がいつ、どこから、どう溢れ出すのかもう分からない。そんな危険な状況なのである。
最悪この地点を中心に大爆発を起こす。そうなればこの山どころかこの国自体が地図から消えてなくなる事は間違いない。
「す、好きで斬った訳じゃないわよ!」
「ぶっつけ本番で慣れない武器を使うからだよ、このバカ野郎が!」
「二人とも、ケンカしてる場合じゃないでしょ!」
口ゲンカになりかけたところを、コーランが二人の頭を叩いて止める。
「とにかく今から逃げても間に合わない。死ぬ覚悟を決めるか、この魔力を何とかするか二つに一つよ!」
とんでもなく無茶苦茶な二つに一つである。
だがこのメンバーは普通の人間ではない。バスカーヴィル・ファンテイルである。
バーナムは地面に転がっていた盤古を指差すと、
「アレ借りてくが、いいか?」
「何か作戦でもあるの?」
「そんな立派なモンじゃねぇよ」
盤古というアイテムの事は、さっきシャドウが言っていたものよりも、少しだけ多くの知識が彼の頭の中にあった。
この水晶玉には純粋に「力」が封じ込まれており、持ち主が願えば筋力にも魔力にもなり、奇跡だって起こせる。その分持ち主の力も消耗するが。それを頼るのだ。
バーナムは地面から盤古を拾い上げた。だが先ほどのオクヰ・イシのように身体がどうにかなるような事はなかった。
「ど、どうなってるの?」
「あの水晶玉は、お母さんの形見にして愛用品。死ぬ間際にあなた達を守って、と願をかけていたわ」
グライダの疑問にコーランが答える。純粋な「力」でしかない盤古は、持ち主が亡くなってもその願いを守り続けていたのだ。
だからなのか、この場を何とかする——グライダ達に害を及ぼさないバーナムを滅する事はなかったのだ。
そんな盤古を、バーナムは自分の胸に押し当てた。そこには彼の心臓——ではなく、龍の力を封じた水晶玉が代わりに収められているのだ。
「我! 今、水神・龍王に願い奉る! 我が声を聞き届け、我と共に戦わん事を!」
その時、盤古が強く輝いた。同時に体内にある筈の水晶玉も強く輝きを放つ。
その輝きの中で彼の身体は人間の身体から龍と人間を合わせたような龍人へと変わっていく。
バーナムの使う四霊獣の拳は気の「放出」「吸収」「集中」「制御」の四つを使って戦う拳法だ。中でも彼が得意とする龍の拳は「吸収」を司る。
手に持ったままの盤古が強く輝くと、大砲はもちろん周囲に漏れていた魔力の流れがみるみるうちにバーナムの方へと流れていく。
「ウォォォォォォォォォォォォォォォ……」
いつもと違う低くゆっくりとした唸り声。いつもの何倍もの魔力を吸収する気なのだ。
だがそんな事はできるのか。例えるなら風船に空気を入れ続けるようなものだ。もし限界が来れば風船は破裂。
つまり、バーナムの身体が保たない。即ち命の保証はない。
しかし彼を手伝う事はできない。グライダやコーランに魔力を吸収などという芸当はできないからだ。
二人は壊れかけた台座に駆け寄った。そして台座から露出しているセリファの肌に触れる。温かい。大丈夫。まだ生きてる。
グライダは左手で台座に触れ、剣を出す要領で力を注ぎ込む。この力は彼女の好きに形を変える事ができる。セリファ以外の部分を破壊する事くらいならできるのだ。
ぐったりとして返事はないが息はある。生きている。そんなセリファとグライダをコーランは自身のマントの中に隠すように被せてやる。
「バーナムが失敗したらこんなの意味がなくなるけど、気休めと思って」
自嘲気味に寂しい笑顔を浮かべるコーラン。二人の両親に娘達を守ると誓った彼女だが、こんな形で死んだとして、二人は許してくれるだろうか。
そんなバーナムは全く苦しげな様子もなく、さっき同様に盤古を高く掲げたまま動かない。
しかし相変わらず低いうなり声がしているので気を失っている訳ではないようだ。全身の筋肉を震わせ、膨大な魔力を吸収するべく全力なのが分かる。
やがて周囲の雰囲気が急変した。あれだけ漂っていた魔力がなくなったのだ。バーナムが全て吸収しきったのだ。
それからゆっくりと、バーナムは天井に開いている穴を見やった。そして盤古を強く握りしめた。
「ウォォォォォォォォォォォォォォォッ!」
今度は大きく、高く一吠えすると、真上に向かって口を開き、そこから青白い炎を吐き出した!
その炎はまるでビーム兵器のように高く高く、それこそ天を突き破らんばかりの勢いで伸びていく。
そしてそのビームは、遠くから見れば火山の噴火のようにも見えた。シャーケンの町で対応に追われている皆が手を止めて空を見上げてしまう程に。
その光の柱にしか見えないそれを、勝利の咆哮と受け取れたのは何人もいなかったろう。
その一人オニックス・クーパーブラックは、ようやく構えていた大太刀を下ろした。そして敵対していたカナLとカナSの二人に、
「どうやらオクヰ・イシは失敗したようですね。まだ時間稼ぎを続けますか?」
クーパーがそう告げた時、宋朝が動きを止めた。耳につけたままのイヤホンから何か聞こえてきたようだった。
そして落ち着けるように一息ついてから、
「その身体は義体らしいな。本体のあるレグナ社ビルが事故で倒壊したそうだ。本体が潰れては義体からの脱出できても元の身体には戻れないが、どうする?」
そう。この目の前のカナLカナSは本人そのものではない。魂のみをこの義体に移して戦っていたのだ。いざとなれば義体を捨てて元の身体に戻ればいい。そう思っていた。
だが本体に何かあってはそれができない。
そして。それを告げた宋朝も、その巨体に見合った腕力を誇示するように何かを握り潰す動作を繰り返しながら、
「今降伏するなら命までは取らん。殺してくれと懇願するような目には遭うやもしれんが」
神鳥のスズエドもようやく地面に降りて羽を畳むと、
『例えるなら戦争犯罪人同然だ。五体満足で済むとは思わん事だ』
これだけ世界をかき回した者の命で動いていたのだ。確かに無罪放免とはいくまい。
宋朝は再びイヤホンに注意を向けた。また別の通信が入ったらしい。
しばし無音の時が流れた後、
「二人の身柄はマルシウィ殿が預かるそうだ」
マルシウィ。古の神々の一人で両腕両脚を失っている神である。
特に何かを司っている存在ではないが、彼の元には不思議と金や宝石といった物が集まる習性がある。自分を巡って争わせないよう身を隠している神だ。
クーパー達も過去何度か会った程度の関係しかないが、確かオクヰ・イシとは血縁の関係だったと記憶していた。
『無事に済んだとは、思わぬ事だな』
マルシウィが彼らをどうするのかは分からないが、スズエドは念押しするようにそう告げた。


一方。今の神々が住まう世界のどこかでは、起きる筈のない大事件が起きていた。
人間の住む異世界からの攻撃である。それも魔力の塊をビームのように撃ち出すものだ。
それが異なる世界である筈の神々の住む大地に大穴を開けたのである。
その大穴から人の住む世界を見下ろした神々は、遥か下にいる龍人が、異世界に加え遥かな高みにいる筈の自分達を睨みつけている事に驚いた。
その目は確実に「ここに手を出すな。さもなくばブッ潰す」と語っている。
ただでさえオクヰ・イシが下界で騒ぎを起こしている事に気づいて大慌てだったところにこれである。
どうしたものかと思っているところに再びビームが放たれた。今度は違う場所に大穴が開けられる。
それだけではない。そのビームは、まるでレーザーカッターのように神々の住まう大地を大きく斬り裂いたのである。これによって三つの山と二つの草原、さらに一つの湖が崩壊してしまった程だ。
もちろん神々も黙っているばかりではない。報復に攻めこもうという血気盛んな者も多かった。
しかし、神と龍の間に基本実力差などない。同じ条件で戦った場合共倒れが関の山。
加えてこちらから攻め込んだ場合、人間の世界では神の力はかなり弱体化するのに対し、人間の世界の存在である龍には弱体化がない。そうなれば負けるのはこちらだ。
『人間の世界に手を出すまい』
それが神々の苦渋の決断であった。


神々の世界。
人間が住む世界で起きた今回の事件と戦いの顛末を、神鳥スズエドと古の神マルシウィから報告を受けた現代の主神、創造神クレアートは神妙な面持ちで述べる。
『今回はその、バスカーヴィル・ファンテイルなる者達に助けられた訳か』
『人間に人間を超えた力をつけさせるのがお嫌な事は理解致します。ですが、いつもいつでも神が人間を助けられる訳ではありません』
さすがのスズエドも頭を垂れて丁寧な口調で返答する。
『人間の世界の事は人間達が解決していくのが一番だと思います。我々はその助けや支えであれば良いと思います。それが……』
マルシウィが続けようとした時、
『バスカーヴィル・ファンテイルだと言いたいのだろう』
その言葉を遮ってクレアートが、あまり嬉しくなさそうに告げる。
『まぁ、オクヰ・イシ殿の死と電波の消失で、だいぶ人間の世界は元に戻りつつあるか』
積極的な干渉は済まい。それが神々の基本方針。それゆえに自分達にこれ以上できる事はない、そう言いたそうに話の終わりを告げようとした時、ふと何か思い出したように、
『古き神の岩蔭殿と宋朝殿は、人間の世界に未だ留まっているな。神なのに』
『今のあの方々は、人間です』
スズエドが垂れていた頭を上げ、クレアートの目を見てキッパリと言い切った。
衰えたとはいえ曲がりなりにも自分達の大先輩。その目力は並々ならぬ雰囲気を発している。
主神とはいえ何から何まで主導権を握れる訳ではない。それ相応の敬意を払わねばならない。
『……分かりました。バスカーヴィル・ファンテイルの存在と維持は、マルシウィ殿らに一任致します』
今度こそクレアートは話の終わりを宣言した。


人間達が住まう世界。
オクヰ・イシもといシイ=ホソミイ亡き後のレグナ社の社屋倒壊、後継者探し、運営方針、それ以上にレグナ社が開発・提唱した新規格の電波が今回の騒動の発端と報じられて以後、その対応に追われる事しかできなくなっている。
加えて高い人気を勝ち得ていたスマートフォンの人気も急落している。
人々もまるで夢から覚めたかのようにやり過ぎを反省し、広まりつつあるマナーと共にスマートフォンから肌身と目を離さぬ生活をしないよう努め出した。
オニックス・クーパーブラックと宋朝は、カツォオス・ウサ山にあると伝わる「地上を滅ぼす威力があると伝わる」十二門の大砲を総て処分していた。
また今回のような事が起きないよう、世界中をめぐって同じような兵器を探し出して対処した方がいいのだろう。二人の胸中はピタリと一致していた。
宋朝はそのためにすぐ旅に出た。
しかしクーパーはこの町を出て行く事に、今の生活、そばにいる人々達との別れに躊躇し、留まっていた。
二人の心境はキッチリ真逆の位置にあった。


今回一番の被害者といえるセリファ・バンビールは、過剰に魔力を吸い出された結果未だ目が覚めないでいる。
単に眠っているだけという事は医学と魔術両方からの検査で証明されているので、目覚めを気長に待っている状態だ。
そして事件解決の道筋を文字通り作ったロボットのシャドウも、自身のエネルギーを使い果たした上に全身がボロボロの状態であり、人間でいう集中治療並みのオーバーホールの真っ最中。
そして神々の世界にケンカを売るような攻撃をしてみせたバーナム・ガラモンドは、全身筋肉痛プラス重度の疲労も重なってまともに身体も動かせぬ入院生活中である。
盤古の力を借りたとはいえ普段以上に人間離れした真似をしたのだ。むしろこの程度で済んで良かったと思わねばならないのだが。
「水……」
彼の、そして胸中の水晶玉の力の源は水神でもある龍王。こうした病院のベッドの上よりも大自然の水辺で休む方が回復が早いのだが、周囲の人間は誰も聞いていない。彼の言葉を含めて。
「とにかく安静にしてなさい。ついでに健康診断でも受けておきなさい」
交代で見舞い——というよりバーナムが脱走しないよう見張りに来ていたサイカ・S・コーランが呆れた口調で注意する。
「それよりまともなモン食わせろよ」
バーナムの場合は重度の疲労と筋肉痛のみ。低カロリーかつ少量の病院食では物足りないのだ。
そんな文句を背中で聞き流しつつ、隣のベッドで眠ったままのセリファの様子を見ていたグライダ・バンビールは、
「そういうのはもう少し身体が動くようになってから言いなさい」
そう言いながら妹の頬をそっと撫でる。
早く目を覚ましてほしいと願いながら。


世界で最も不可思議な港町として名高いこのシャーケン。
ここにも、朝はきちんとやってくる。
同時に、面倒な騒動までやってくる。
平穏な日は、一日としてなかった。
この広い町のどこかで、必ず誰かがはた迷惑な騒動を引き起こし、巻き込まれるのだ。
だからこそ、ここへ来れば——どんな職種であれ——仕事にあぶれることはない、とまで云われている。

<FIN>


あとがき

1994年に始まったこの「バスカーヴィル・ファンテイル」の物語。年に二回の掲載からの年一回の書き下ろしを加えて交えて2023年に約30年の年月をかけ全35話で完結の運びとなりました。
けれどラストの漠然としたイメージは初期の初期から既にあったりします。そのラストへの道のりが約30年。本当に長かった。
基本1話完結で進み、最後のエピソードを連続で、というアニメや特撮でよくあるパターン。
……とはいえこの物語はバスカーヴィル・ファンテイルの戦いと日常を描く物語。
バスカーヴィル・ファンテイルが無くなったわけではありませんから、いきなり終わってもふと急に始めても大丈夫なのです。
どれだけの方が最後まで追いかけて下さったのかは分かりませんが、本当に有難うございました。

文頭へ 戻る メニューへ
inserted by FC2 system