トガった彼女をブン回せっ! 第2話その4
『こじれるだけだから』

目を見開いて驚く昭士に向かって、スオーラは少し顔をしかめると、
《アキシ様。ムータをお忘れになるのは、あまり感心できませんね》
でもすぐに笑顔になると、
《でも、ムータが破壊されていない限り、先程の『トルナーレ』のキーワードを唱えれば、すぐ手元に現れますから》
(こいつは……)
昭士は持っているカードをじろりと睨みつけ、制服のポケットにしまいこんだ。
昨日、そのカードからの「声」に色々な事を教えてもらったからだ。しかしこの「トルナーレ」というキーワードに関しては全く教えてもらっていない。彼の憤りの理由である。
そういう事はもっと早く教えてほしい。昭士は本気でそう思った。
「いや、わ、わわ忘れたんじゃなくて、い、いぶきちゃんにとと取られちゃって」
それを聞いたスオーラは頭を押さえて、
《まさか、そういう実力行使に出るとは、思いもしませんでした》
自分では使えないと判断したので、関心を無くしたと読んでいたスオーラ。しかしその読みは完全に外れていたようだ。それも大外れである。
《それにしてもアキシ様。あまりお身体の調子がよろしくないようですが?》
スオーラが、殴られてまだ痕が残る昭士の顔面を、しげしげと眺めている。
「あ、ああ。いいいいぶきちゃんと、ちょっと、ああ、あって……」
昭士のたどたどしい言葉で、別れてから何があったのか、さすがにスオーラにも見当がついた。
《そこまでお嫌だったのですね、イブキ様は……》
スオーラの家は代々僧職の家系である。幼い頃から人々に尽くし、または導いてきた両親・兄弟を見て育ったので、彼女自身は「他人の為に」何かする事を普通だと思っている。
もちろん世の中全ての人がそうだとまでは思っていないが、ここまで「他人の為に」というものを拒絶する人がいるとまでは思わなかったのだ。
それでも彼女は《世界が違えばここまで常識が違うとは》と、自分に言い聞かせるように呟いている。
「いい、い、いぶきちゃんが、い嫌なのは、お、俺が全部の、け権限を、持ってる事だよ」
いぶきの意志で自在に剣に変身し元に戻れるのであれば、徹底的に無視したり逃げ回れば済むだろう。他人の為にアレコレと行動したくないだけだから。
しかし昭士の意志でのみ剣に変身し元に戻れるのであれば、喜ぶ筈があるまい。いぶきのような性格ならなおさらだ。
《ですが、お嫌な事は判りましたが、何故なのでしょうか》
スオーラが出てきて当然の疑問を口にする。
あそこまで徹底的に「他人の為に」行動するのが嫌いなのである。何の理由、事情もないとは思えなかったのだ。
過去何か嫌な事があったのか。心が傷つくようなトラウマを抱えているのか。
もしかしたら。それを解決できれば、喜んでとまではいかなくとも、ある程度の協力を約束してくれるのではないだろうか。
《アキシ様。何かご存知ではありませんか?》
スオーラは自分の考えと共に、昭士にそう訊ねてみた。
「ちょ、ちょちょっと、判らないけどたぶっ」
昭士の身体がいきなり真横に吹き飛ばされた。部屋に入らず入口の前でやりとりをしていたため、スオーラは一瞬何が起きたのか全く判らなかった。
だが昭士が吹き飛んだ直後、いぶきの姿が目の前を通り過ぎて行った。それも宙に浮かんだ状態で。
つまり、昭士達の不意をついて、いぶきが助走をつけたドロップキックを喰らわせたのである。
《アキシ様!?》
スオーラが驚いたのは無理もないだろう。あの様子では受け身も取れずに吹き飛んだに決まっているからだ。
案の定部屋の出口から首だけ出してみると、昭士の身体は数メートル先で完全に伸びていた。
着地してしゃがんでいるいぶきは「よし」と満足そうにニヤリと微笑むと、そのままズンズンと彼に向かって歩く。
《イブキ様、アキシ様に一体何を!?》
さすがに実の兄に対するあまりの行動にスオーラがいぶきに喰ってかかるが、いぶきの方はそっけなく「なンだ痴女か」と呟くと、
「人が持ってるカードを勝手に持ち逃げしたバカに、制裁加えただけだけど。それともナニ? あンたの住ンでるところでは、他人の物を勝手に持って行くのは良い訳? 良い事な訳?」
昭士の回りをキョロキョロと見回し、そして制服のポケットをあちこち探ってようやくカードを見つけると、それをひょいと拾い上げる。
「それもね。あたしの制服のポケットに隠しておいたヤツを持って行ってるの、この変質者のバカ野郎は。考えてもみなさいよ。女子高生の制服をあさってる男なンて、変質者以外のナニ? それも女子更衣室に忍び込んで!」
この学校の女子の制服は、古式ゆかしいセーラー服。この学校のものは上着の内側に内ポケットがあるタイプだ。そこに隠すようにしまっていたのである。
「それにしても、いきなりドロップキックはないだろうが、まったく……」
準備室から出てきた峰岸も、少し向こうで伸びている昭士を見ていぶきの行動に呆れている。
「お前のクラスは、確か四時間目が体育だったな」
彼の言う通りいぶきのクラスは四時間目が体育だった。峰岸はいぶきのクラスの担当教師ではないが、そのくらいの事は知っている。
「そーですよ。体育の前までは確かにあったのに、ついさっきポケット見たらカードがないのに気づいたンですよ。おまけにこいつ四時間目頃に来たって話だし、絶対そうだって。おかげで昼休み返上で学校中探しまくるハメになりましたよ、このバカ変質者。先生。コイツ刑務所にブチ込んで、二度と出て来ないようにしてもらえませン?」
相手が教師のためか、それとも自分に有利なように話を進めるためか。いつもより若干言葉遣いが丁寧になっている。
いぶきの発言にスオーラは露骨にげんなりとした表情を浮かべてうなだれている。その態度を見たいぶきは、
「ナニよそのリアクション。まるであたしが悪いみたいに見えるンだけど? あたしはただ、一人の変質者をブッ飛ばしただけよ? 誉められこそすれそンな目で見られる筋合いはないわよ? それともあンたこンな変質者のバカをかばうの? 女のクセに? やっぱり別の世界の連中は常識がなってないわねー」
《あの。イブキ様。落ち着いて聞いて下さい》
どう説明したものか。そんな表情をありありと浮かべるスオーラは、
《ムータは、使い手が望めば何処にあろうと手元に呼び寄せる事が可能なのです。イブキ様が仰るような事は、アキシ様は何一つしておりません》
「は!? たかだかバカの変質者一人かばうのに、よりにもよってそンなバカバカしい理由つける!?」
《バカバカしくなどありません。証拠をお見せ致します》
スオーラは自分のジャケットの胸ポケットから、いぶきが持っているのと全く同じデザインのカードを取り出した。
《盗まれたと認識されると面倒なので、こう、手を広げて頂けませんか》
そう言いながら両手を平らに広げる仕草をする。いぶきが同じように手を広げるとそこにカードを乗せて、自分は数メートル離れる。
すると、イブキの手からカードがパッと消え失せた。まるでテレポートである。
自分が見ている目の前でカードが消えた事に目を見開いて驚くいぶき。そしてスオーラを見ると、確かに彼女の右手には自分の手の上にあった筈のカードが握られている。
《これでお判り頂けましたか?》
そう言いながらスオーラはカードをポケットにしまうと、
《イブキ様が何をどう嫌おうと構いません。ですが……》
言いかけた時、かん高い電子音が鳴り響く。午後の授業開始五分前を告げる予鈴だ。
それを聞いたいぶきは何か言いたいが何と言っていいのか判らぬ渋面のまま、無言で走り去って行った。もちろんカードを握り締めたまま。
《あ、イブキ様。話はまだ……》
予鈴が判っていないスオーラは彼女を追いかけようとするが、倒れたままの昭士を放っておけないと彼のそばにしゃがみ込む。
そして彼の様子を観察してみるが、単に気を失っているだけだと判った。側頭部にいぶきの物らしい靴跡がクッキリとついている。
首の骨に古傷があったと知っているのに頭への攻撃。いぶきは本当に「加減」というものを知らないようである。
スオーラの言葉が理解できないため、二人のやりとりが今一つ飲み込めないまま取り残されていた体育教師・峰岸。未だ目を覚まさぬ昭士を見下ろして、
「こりゃあ、五時間目は欠席確定だな」
そう呟くと、彼は内線電話で職員室に電話をかけた。
「一年一組の角田昭士が病気で欠席する」と。


角田昭士が目を覚ましたのは、学校の保健室だった。
途切れる寸前の記憶をどうにかたぐり寄せてみる。
確かスオーラと話している最中に、いきなり頭を蹴られてそのまま気絶してしまった筈だ。やったのは妹のいぶき。それ以外にはあり得ない。断言できる。
昭士はそろそろと起きてみる。あれだけ勢いよく頭を蹴られたにもかかわらず、痛みは全くない。朝に受けた「暴行」の痛みも含めて。
それを治療してくれたのは間違いなくスオーラだ。彼女は色々な種類の魔法を使う事ができる。この程度の治療なら朝飯前だろう。
ベッドのそばのパイプ椅子の背に白いマントがかけてあった。きっとスオーラがさっきまでここにいたのだろう。ここまで運んでくれたのが彼女かは判らないが。
(そういえば、今日は何で彼女はこっちの世界に来たんだろう)
今さらだが、そんな疑問が湧いた。
昨日は、こちらの世界に「エッセ」という化物が来たから。それを倒すためにやって来た。
しかし今日は違うような気がする。もしまた新手のエッセが来ているのなら、あの時悠長に会話などしているヒマなどないだろうから。
ふと時計を見ると、もう六時間目が終わっている時間だった。
午前中の大部分を気絶して過ごし、午後もまた気絶してしまった。今日は一体何しに学校へ来たんだろう。そんな空しさがこみ上げて来てしまう。
そんな時、保健室の外が急に騒がしくなった。昭士は「まさかまた敵か!?」と思ってベッドから飛び下りようとしたが、そういう種類の「騒がしさ」ではなさそうに思えた。
昭士は何となく嫌な予感がして、急いで出入口の引き戸を開ける。
そこには、スオーラを取り囲む生徒や教師達の姿が。確かに明らかに部外者の彼女の姿は異常に目立つ事だろう。
しかし彼らの態度は部外者をいぶかしむ様子はこれっぽっちもない。それは彼女が美人だからという面もあるだろうが、多分それだけではないように思えた。
戸が開いた事に気づいたスオーラがこちらを向くと、
「ア、アキシ様。気がつかれましたか」
彼女は手にしていたトレイを少しだけ持ち上げると、
「ちょうど良かったです。今日は何も召し上がっておられないとお聞きしましたので、ささやかではありますが、お食事を作って参りました」
トレイを見ると、何種類もの野菜を煮たものが入った器と、細長いパンのようなものが数本乗っていた。
「ど、どこで、こここれを?」
「『ガクショク』という場所をお借り致しました。快く貸して下さったので、とても感謝しております」
と、そこまで話して、昭士は妙な事に気がついた。
言葉が通じるのである。スオーラと。いとも簡単に。
もちろん今の昭士はカードを持っていない。昼休みはそれで苦労(という程のものでもないが)したというのに。今はカードを持っていないのに易々と言葉が通じているのだ。
それも自分だけではなく、それ以外の人間とも。
だから自分とのやりとりもちゃんと理解されている。そのため取り囲む人だかりからも「あんな美人の手料理かよ」「うらやましいヤツめ」と、完全にやっかみ全開の言葉が送られている。
「では皆様、これで失礼致します」
スオーラは人だかりに向かって軽く頭を下げると、保健室の中に入って来た。手近のスチール棚にトレイを置き、戸を閉める。
「あ、あ、ああの、あのさ」
「まずは召し上がって下さい。もっとも、食材や調味料がわたくしの世界の物とかなり違うので、味については保証できませんが……」
そう言ってトレイを差し出すスオーラだが、料理の見た目は全く問題がない。漂ってくる香りも本当に美味しそうだ。
しかしそれでも、食べてみたらマズイという料理は山程ある。
だが。こういう状況で食べる事を拒否できる人間が――いや、男がいよう筈もない。
何より朝食べたきり何も食べていないのだ。正直腹も鳴っている。昭士は覚悟を決めてパンに手を伸ばし、一口かじった。
以前本格的なカレー屋で食べた、インドのパン・ナンによく似ている。それよりはだいぶふんわりとした食感だ。
スプーンを手に取り、野菜の煮物をすくう。ジャガイモ、玉ねぎ、ニンジン、トマトに加え、粒のままのニンニクまで入っていた。
「わたくしの国で『モニミート・ナカラス・ラ・ホミー』と呼んでいる、野菜を煮込んで作る具沢山スープです」
というスオーラの説明を、昭士は半分も聞いていなかった。
美味しかったのである。とても。
「空腹は最大の調味料」という言葉があるが、その空腹分を差し引いても、この煮込み料理の味は格別だった。
ほとんど無我夢中で食べ、器が空になった時、昭士はようやく一息ついた。
「あ、ああ、ありがとう。こんな、おおお、美味しい料理。は、は、初めてだ。こっちの、せせ世界の、ミ、ミミ、ミネストローネっていう料理に、結構ににに似てたかな」
途中から面と向かっていうのが恥ずかしくなり、昭士は顔を真っ赤にして下を向いてしまう。
「こ、こちらこそ。野菜ばかりでは受けないと『ガクショク』の方にも言われたのですが、わたくしの国では、肉や魚はほとんど食べないので……」
スオーラもここまでハッキリ「美味しい料理」と誉められ、どことなく恥ずかしくなって、同じく下を向いてしまう。
どことなく気まずい沈黙。しかも二人きり。場所は保健室。
この気まずい雰囲気をどうにかしなければ。そう思って口を開く。
『あの!』
だが二人の声が綺麗にハモってしまい、余計に気まずい空気が流れる。
「ス、スス、スオーラからで……」
「アキシ様から、どうぞ……」
「い、いや、スオーラ、かかからで!」
「い、いえ、アキシ様から!」
お互いがお互いに先を譲り合って話が進まない。ますます気まずくなっていく。
正直、部屋の空気が気まずさでズンッと重くなったのが感じられる程だ。
他に誰もいないから良かったようなものの、もし誰かいたら「こんなやりとり今時マンガでもないわ」と冷めたツッコミの一つ二つ入っていた事だろう。
しばらく部屋の中を沈黙が支配する。
しかし、そんな気まずい沈黙を破ったのはスオーラだった。
「と、ところでアキシ様。先程何か話があるような事を……」
いきなり声をかけられ、ドモり症以上にドモりまくってしまう昭士。
「あ、あの、あのさ。俺、カ、カカード、持ってな、ないのに。なんで、ここ言葉が?」
その様子が大層おかしかったのだろう。スオーラはクスッと笑うと自分の胸を指差し、
「わたくしが使う魔法は、ここにしまってある本に書かれている物です。その中に『言葉が通じるようになる魔法』がありましたので、使ってみました」
だが時間制限があるらしく、そう長い時間持つものではないそうだ。
「そ、そ、それで、す、スス、スオーラの話って?」
今度はスオーラが答える番、とばかりに話を振ると、
「先程、イブキ様の闖入で中断してしまったの∞≦【♀′●⇔∃※@」
途中で彼女の言葉がいきなり聞き取れなくなった。さっき言っていた「言葉が通じるようになる魔法」の効果が切れたのだろう。
もう一回使ってくれる方が昭士にとっては有難かったが、魔法を使うという事は、彼女の力をわずかでも使ってしまう事になる。それならば、こっちが合わせる方がいいだろう。
昭士は、何となく右手に意識を集中し、教わったばかりの言葉を唱える。
「トルナーレ」
さっきと同じように右手に青白い火花が走る。痛みはほとんどないし、さっき経験しているので驚きはない。
青白い火花が消えると、そこには確かに青いカードが。
やっと自分の手元にカードが戻って来た。昭士は心底安堵し、その顔には小さな笑みまで浮かんでいる。
どうせまたさっきのようにいぶきに殴られないとも限らないが、それでも。
昭士の手にカードが出るのを確認したスオーラは、改めて口を開いた。
《先程、イブキ様の闖入で中断してしまったのですが、イブキ様があそこまで「他人の為に」というものを拒絶する理由を、ご存知ではありませんか?》
嫌な思い出しかない(だろう)とはいえ、生まれてからずっと一緒に過ごしてきた家族である。角田いぶきという人間に一番近しい存在である事は間違いがない。
近しい存在なら、他の人間よりは多少なりとも何か判るのでは。知っているのでは。
そんな思いで問うた言葉に、昭士はしばし考え込むと、
「り、りり理由かどうかは、わわわ、判らないんだけど……」
どことなく自信がなさそうにそう前置きをしてから、続きを話した。
「ずず随分前に、キッパリ、こここう言ってた事があるんだ」
スオーラは少し身を乗り出し、真剣な表情で息を飲んで次の言葉を待つ。
そんな彼女を見た昭士は「そこまで食いつくか」と苦笑いを浮かべると、こう言った。
「せ、せ、せ、生理的に嫌い」
《せ、生理的!?》
生理的嫌悪。感覚や本能的な嫌悪・拒絶という意味だという事は、スオーラにも理解できた。
「ああ、あと、は反射的に嫌い、とも言ってた」
《反射的!?》
反射的。何らかの刺激に対し、瞬間的に反応する事を言う言葉だという事は、スオーラにも理解できた。
「は、は反射的の方は、おお俺にも意味がよく判らないけど」
《わたくしも、そんな言葉は初めて聞きました》
反射的に「嫌だと思う」ならば判るが、嫌な理由が「反射的に嫌」は、スオーラも初めて聞いた。
一番近しいと思える昭士ですらこうなのだ。本人に聞いても同じような答えが返ってくるだけだろう。いや、返って来ない確率の方がずっと高そうである。
「だ、だからさ。いいいぶきちゃんの事は、気にしない方が、いいいいと思うよ。ここ、こ、こじれるだけだから」
十五年の人生でそう割り切る事を覚えた昭士が、スオーラにそう言う。その表情は悲しくも寂しくもない、どことなく「無」を思わせる表情だった。
スオーラも昨日からのいぶきの言動を思い返し、どうひいき目に見ても協力的な人物とは思えない事は理解している。
だから、何らかの突破口を見つけて説得し、協力してもらえる道はないかと思っていたのだ。今日の来訪の理由の一つでもある。
だがその道は、遥か険しいどころか限りなく不可能に近いものだという事を悟った。
もし自分が見習い僧でなければ。もっと長い年月キチンと修行を積んだ僧職であれば。いぶきですらも協力してくれるよう説得できたかもしれない、と同時に思った。
《今日程、自分が見習いだという事を、悔しく思った事はありません》
ガックリと力なくうなだれるその様子は、昭士の目から見ても、心底気の毒に思えた。
同情などではなく。

<第2話 おわり>


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