『輝きの向う側 中編』
蒸気船の隣まで漕いで来たカンナはダンディ団の三人に向かって、
「おっ。ダンディ団の三人か。何してんだい、そんなオンボロ船に乗って」
琉球空手の使い手桐島カンナ。大柄でがっしりした体躯に見合った力とおおらかさ。普通は四、五人がかりで漕ぐボートをたった一人で漕いでいた。
「カンナさんこそどうしたんです? ……あれ? その毛布にくるまった女の子は?」
西村が、ボートの中にいる毛布にくるまった少女を指さす。彼女は横になったまま眠っていた。
「ああ。そうだった。三人とも、ちょっと手伝ってくれ。急がないと大変なんだ」
三人は、事情が良く判らないながらも急いでそのボートに乗り込み、カンナの指揮のもと、急いで陸地へ向けて漕ぎ出した。
ボートを漕ぎながら、カンナは事情を話し出した。
カンナは故郷である沖縄で空手の修行をしていた。しかし、本当は、両親の墓参りに行っていたというのが正しいのであるが。
帝都に帰る為に香港経由横浜行きの蒸気客船に乗り、横浜までもうすぐという時、事件に巻き込まれた(?)のだ。
日の出の直前、早く目が覚めてしまったカンナは、船の中をぶらぶらと歩いていた。
そんな時、曲り角の向こうから小さな悲鳴が聞こえてきた。カンナはその場でぴたりと立ち止まってじっと耳をすましていると、バタバタと暴れる音のあと、ばすんと鈍い音がして、バタバタ音は止まった。
(何だ? こんな朝っぱらから……)
気になったカンナはそっと曲り角から様子を伺う。
スーツの男が二人。そのうちの一方がぐったりとしたワンピース姿の女性を抱えている。
『ふう。こんな所に隠れていやがったとはな』
『まだ日の出前だが、早い所俺達も身を隠そう。こんな所を見られる訳にはいかん』
男達が話していたのは中国で広く使われている広東(かんとん)語だった。何度か香港に行った事のあるカンナは、一応広東語は判る。現在は英国領とはいえ元々中国の一部の香港からの客船だ。広東語を使う人間が乗っていても何の不思議もない。
『何が見られたくないって?』
曲り角から姿を現わし、広東語で不敵に声をかけるカンナ。事情は全く読み込めてなかったが、自身の勘が言っていた。
「こいつらは悪い奴だ」と。
案の定、無言のまま男の一人が銃を取り出す。しかし、女性を抱えたもう一人の方に、
『バカ、いくら何でも、こんな所で銃は使うな!』
小声できつくたしなめられる。そして、そのわずかな時間が命取りとなった。
一瞬で間合いをつめたカンナの拳が、銃を構えた男の顔面に叩き込まれていた。まさしく「目にも止まらぬ早さ」とはこの事だ。たまらず男の身体が吹き飛ぶ。
『このっ……』
残された男も何とか反撃しようとするが、それよりも早く男の後ろに回りこんだカンナの手刀を後頭部に受け、あっさりと気絶した。
二人の男達をそばの貨物室の中に放りこむと、カンナは気を失った彼女を抱えて甲板に上がった。
この女の子は、端から見ても衰弱している。それに、まだスーツの男の仲間がいる可能性もある。
幸い陸地も近い。ここは逃げるが勝ちだ。
周囲を見回すと、すぐに非常用の救命ボートを発見した。そして、丈夫なロープで固定されている非常用の救命ボートの前で自然体で構える。
「チェストォォォッ!!」
裂帛の気合いと共に横なぎに払った手刀が、ボートを固定する為のロープをいとも簡単に切断する。
それから手慣れた動きでボートを海面に下ろし、少女を抱えてボートに飛び下りる。
それから彼女をボートの中の毛布でくるんでやると、遥か先に小さく見える船――おそらく運河の中で使うような小さな蒸気船だろう――に向かって懸命に漕ぎ出した。


「……てな訳で、カンナさんと合流できた俺達はそのボートで戻ってきまして、ついさっき、その女の子を知り合いの医者に運んだとこなんです」
道を走りながらマリアにそう説明する武田。その話を走りながら聞いていた大神も、
「そうか。カンナは沖縄に行ってたんだっけ。それにしてもカンナらしいというか……」
困っている人を見捨てておけない。そんなカンナらしい話だ。かえでも小さく笑っている。
「それにしても、外海からここまでボートを漕いでくるなんて。さすがカンナね」
昔、乗ってた船が沈没した為に泳いで帝都に帰ってきた事を思い出し、マリアが苦笑する。
「ホント大したもんですよ。こっちだって疲れてるんですけどね。俺がジャンケンで負けて、みなさんの所に走るハメになっちまいまして……」
そういう武田は、すっかり息が上がっている。でも、自分が案内しない事には意味がない。その気力だけで走っているような有様だ。
案内されて着いたのは、隅田川の河口に近いあばら家だった。医者と言っていたが、看板は出ていない。武田は戸を開けるなり、
「み、みなさんを連れてきました!」
誇張なしに息も絶え絶えの武田に、水の入った湯飲みを差し出したカンナは、
「よかった〜、かえでさんとマリアが来てくれて。あたい達じゃ手に負えねーんだ」
ほっとして気の抜けたカンナがマリアを急かして診察室に招き入れる。
診察室のベッドの上には、質素な入院服に着替えを済ませた少女が座っていた。
艶のあったであろう茶色の髪はほつれたまま。顔色も悪く唇はガサガサ。肌にもはりがない。充血した目の下には隈ができている始末だ。
さすがに今は多少は落ち着いているのだが、おそらく、極度の緊張下にあったか、もしくはよほど疲れているのだろう。
彼女は入ってきたマリアを見て一瞬怯えるものの、カンナが大丈夫だと目で合図する。カンナはわざと明るい調子で、
「いやぁ。この子、アメリカ人らしいんだ。あたいは英語はチンプンカンプンだし。でも、この子、日本語は片言しか話せないみたいでさ。あたい達じゃ話にならないんだ」
照れくさそうに頭をかきながらそう説明する。なるほど。通訳をしてほしかったのか。
かえではマリアの背を軽く叩いてうながした。かえでも英語は判るが、マリアの方が堪能な事は間違いない。
マリアは納得すると、彼女に英語で話しかけた。
『私はマリア・タチバナと申します。一体どうされたのですか? 訳を話してはもらえませんか?』
マリアがそう話しかけた時、開口一番こう訊ねた。
『ここは……ニッポンなのですか?』
『? ……ええ。ニッポンのトウキョウです』
その答えを聞いた途端、彼女の目からボロボロと涙が流れ落ちる。あとは顔を覆って泣きじゃくるばかりだった。
仕方なく、質問は彼女が泣き止むまで待つ事となった。
十数分後、どうにか落ち着きを取り戻した彼女は、気恥ずかしそうにエイドリアンと名乗った。
アメリカのニューヨークに住んでいた彼女は、遠く離れた東洋の神秘の国・日本に強い憧れを持つ一少女であった。
憧れは日に日に強くなり「いつかここを出て日本に行く」という、ただそれだけを思って生きてきた。
彼女を知っている人間は、そんな彼女のささやかな思いは皆知っていた。
辛く苦しい生活の果てに、どうにかその為の資金をためた彼女は、恋人と共に――彼の方はあまり気乗りしていなかったが、彼女が喜ぶのなら、という心境であった――アメリカ大陸を横断し、サンフランシスコから太平洋を渡って日本に来る……筈だった。
サンフランシスコの港で、ちょっとしたマフィア同士の抗争に巻き込まれたのだ。
中国人マフィアが二つに割れての派閥抗争の真っ最中だったのだ。。
一部のマフィアが執拗に二人を追ってきた。まるで、重大な秘密を持っている重要人物であるかのように。
訳も判らず追われていた二人だが、仕方なく彼の方が囮となり、その隙に彼女一人でも日本へ行かせるという作戦をとった。
むろん彼女は大反対。確かに彼は強いと思うが、多勢に無勢の言葉もある。
「心配するな。日本で待ってろ。必ず探し出してやるから」
それで別れる事になってしまったのだ。
だが、彼女もそそっかしいのか、たった一つミスをした。乗った船が「日本」行きではなく「香港」行きだったのだ。
それに気づいたのは太平洋のど真ん中。もちろん引き返せる訳もない。
だが、一旦こうと決めた女性の強さ。それならば香港から日本を目指せばいい、と開き直りさえした。
頼りにしていた彼は、もうそばにいない。いつまでも泣き暮れていても事態は何も変わらない。
ならば、言い出した自分がきちんと日本へ行く。そして、彼を信じて日本で待つ。生きていれば会う事もできる。その一念が彼女を突き動かしていた。
香港に着いたあと、どうにか監視の目を盗んで日本行きの蒸気客船に密航して日本を目指していた。
ところが、貨物室に隠れていた所を、問題の中国人マフィアの仲間に見つかってしまったのだという。
あとはここで目を覚ますまで空白の時間があるのみだ。
そこまで聞いた時、マリアは首をかしげて考えていた。
マフィア同士の抗争に巻き込まれた事は、確かに不幸である。それについては同情すらする。何も判らず追われるのであれば、このやつれ方にも納得がいく。
しかし、国外へ行った彼女を、そこまでして追いかける理由が見当たらない。
仮に、何か重要な取り引き現場を見られたのなら、見つけた段階で殺してしまえばいい筈だ。「死人に口なし」の例え通り、証拠は無くなる。
それをしなかったという事は、彼女自身が目的なのだろうか?
少し考えてから、マリアは再び口を開く。
『では、あなたにもその彼にも、ここまで追われる心当たりはないのね?』
『はい……。確かに彼は闇酒場で用心棒まがいの事はしていました。ですが、本当にそれだけです』
彼を思い出したのだろう。目を伏せて不安を隠せない心配そうな表情を浮かべる。
『闇酒場で用心棒……』
マリアは、自分の経験から彼女の言葉を肯定した。用心棒といってもマフィアの組織の末端構成員でしかない。重要な情報が流れてくる訳はないし、警察に踏み込まれた時などに出番がある他は、仕事(主に酒の運搬の護衛)がある時に呼び出されて言われた通りの事を成し遂げる。それだけだ。
末端構成員にそこまで重要な「仕事」が回ってくるとも思えない。
確かに組織を抜けようとする人間を追ってくるという事はあり得るが、それは彼女が追われる理由にはならないだろう。抜けられない為の人質という可能性もない訳でないが、中国人マフィアが追ってきたという点が気になる。
『ともかく、まずは身体の回復ですね。もし、あなたの恋人があなたを追って日本に来ているのであれば、回復してから探す事もできるでしょう』
そう言ってマリアは立ち上がった。今までの会話はみんな聞いていたが、この中で二人の会話が理解できたのはかえでくらいであろう。
『エイドリアンさん。そのあなたの恋人の名前とか特徴を教えてもらえないかしら? 少しはお手伝いができるかもしれないわ』
かえでが優しくそう訊ねた。が、エイドリアンはそれを話す事にためらいを感じていた。いくら助けられたと言えども、初対面の人間をすぐに信じるのはどうかと。
だが、彼女は日本の事は何も知らない。土地勘もコネも何もないのだ。それに、下心なしでここまでの事をしてくれる人に、悪い人はいないだろう。
そう思って、枕元に置いてあった真新しいロケットを開いてマリアに差し出した。それを受け取ったマリアの顔が凍りつく。
『彼はジョンと言います。身長はだいたい六フィート(約一八〇センチ)くらいの痩せ形で……』
判りやすく彼の特徴を伝えるエイドリアンの言葉を、マリアはろくろく聞いていなかった。ロケットの中の写真に写っていたのは……。
誰あろう、あのジャックナイフ・ジャックその人だったのだから。
しばらく静養が必要と医者が判断した為、エイドリアンを彼等に任せ、四人はそこを去った。
「それじゃあ、あの時会ったあの男が、あの女の子の恋人だって言うのかい、マリア?」
事情を聞いた大神がマリアに訊ねる。
「でも、あの人はジャックさんって言うんじゃなかったっけ?」
「ジャックというのは、ジョンという名前の通称です。あだ名のようなものといえば、お判り戴けると思います」
つまり、ジョンの通称とジャックナイフの名前とを引っ掛けた通り名という訳だ。
「再会できるかと思ったら、再びのすれ違い。悲しいわね」
かえでがため息混じりに寂しそうに呟く。ここまで事情を知って関わってしまうと、何とか二人を無事に再会させたいという思いが四人の内にあった。
「で、でも、ダンディ団のみなさんが協力してくれるって言ってましたし。きっと会えますよ」
不安そうな雰囲気を少しでも吹き飛ばそうと空元気を出す大神。
「隊長の言う通りだな。会えると信じているから再び出会える。信じるってのは大事な事だよ。な、かえでさん」
「……カンナの言う通りかもしれないわね。ここで私達が沈んでいてもしょうがないわ、マリア」
かえでが、どことなく暗い顔のまま歩くマリアの方をポンと叩く。
「そうですね」
マリアは静かに答えただけだった。
四人が劇場へ戻った頃には、もう時計は夜の十時を回っていた。


次の日。マリアはいつもよりも早く目が覚めた。普段から裸で眠っている彼女はすぐ服を着ると質素な机に向かい、自分の銃を分解し始めた。
こうした銃器は整備と手入れの為、簡単な工具があればネジの一本に至るまでバラす事が可能なのだ。
部品の一つ一つの汚れを取り、磨き、再び組み立てる。毎日のようにやっている事だ。目を瞑っていてもできてしまう。
もっとも、マリアはこの銃を自分の使いやすいように徹底的に手を入れているので、銃本来の原型をとどめている部分はない。まさしくマリア専用の銃と言ってもいいかもしれない。
組み立てが終わり、すっと構えてみる。弾は入っていない。
そんな時、ふと昨日の事が思い出された。
(夢……か)
己以外の総てを無くし、空虚な心で破滅を待ちながら、一人で堕ちていく事を望んでいたニューヨーク時代。
そんな生活を終わらせる事ができたのは、かえでの姉。故人である藤枝あやめのおかげだった。
今にして思えば、あの頃の自分は愚かというより情けなかった。
何故、自分は国を捨ててしまったのだろう。逃げ出してしまったのだろう。
自分を襲うあらゆる物と戦う力がなかった――いや。判らなかった自分。
今ではこの帝都で大事な使命がある。大切な仲間がいる。
あの頃の自分は、そんな事は考えもしなかった。だが、今は違う。自分は何の目的もなく、ただ息をするだけの塊ではないのだから。
ふと、昨日のエイドリアンの顔が思い浮かんだ。やつれた中にある一途な思い。自分はこの為に生きるんだ、と決めた強い意志。そういった事を「夢」というのだろう。
日本に行ってみたいという一心で密航までしてきた少女・エイドリアン。
そんな彼女と共に日本へ来る事を決意したジャック。
そんな二人も、自分の「夢」というものを持っているのだろう。そして「夢」を持つ者は皆眩しいくらいに輝いて見える。そして、マリアにはそんな眩しい二人が羨ましくも思えた。
二人だけではない。この帝國華撃団の仲間達も、それぞれのしたい事、目指すものがある。
間違いなくみんなは輝いている。少なくとも自分はそう思う。
私も――私は、そんな風に輝いているのだろうか?
ふと自問せずにはいられないマリアだった。
その日の昼近く、かえでは自室で書類を片づけていた。
その時、部屋のどこからか男の声がした。
「副司令。急ぎお知らせしたい事が……」
かえでは書類整理の手を休め、男の声に耳を傾ける。
「昨夜遅く、横浜港の倉庫街で一台の車が事故を起こし、車を運転していた外国人の男が一人、病院に運びこまれました」
かえでは何も言わず次の言葉を待った。何も無関係な事を話してくる訳はない、と。
「その倉庫には、明らかに黒鬼会(こっきかい)の脇侍(わきじ)・改の材料と思える物が収められていました。その材料は、月組の方で総て回収を済ませました」
「……そう。ご苦労様」
現在帝國華撃団が戦う謎の組織・黒鬼会。偶然とはいえ、その先兵脇侍の材料を押さえる事ができた。これは朗報と言っていい。
帝國華撃団の中で、偵察・情報収集を任務とする月組。その活躍のおかげで大神達花組は活動できるのだ。
「それで、その事故を起こした外国人の男は?」
「どうやら日本に来たばかりの男のようです。名前はジョン・マッキンレイ。身長はだいたい六尺(約一八〇センチ)程の痩せ形の金髪の男です」
その報告を聞いたかえでは、
「判りました。それにしても……」
上の天井板を呆れ顔で見つめていた。
「忍者映画じゃないんだから、そんな所から報告しなくたっていいのよ、加山くん」
彼の気配が消えてから、彼女は大神とマリアを呼び出した。
かえでから報告を受けた二人は隅田川の河口に近いあばら家へ行った。そこでエイドリアンと会い、彼が横浜の病院に入院している事を知らせた。
彼女は彼の元に行きたがっていたが、まだ身体が回復しきっていない為に、それを苦労して押しとどめる。
それから大神とマリアは横浜へ向かう為に新橋駅へ向かったが、また事故があったらしく、全線不通だった。
そこへ二人を追いかけてきたのはダンディ団のボスだった。どこから調達してきたのか判らないが小さな車に乗っている。
「ああ。先生から連絡を受けて、お二人を追いかけてきたんですよ。列車は不通だって言いますし、これで横浜までお送りしますよ。乗って下さい」
二人は渡りに船とばかりにその車に飛び乗り、横浜へ向かう事にした。
「しかし、昨日の今日でこんなに早く情報が入るなんて凄いですね」
ボスが感心したように言う。が、いくら何でも帝國「華撃」団の情報網にかかったとも言えず、
「横浜に住む知人に電話で頼んでいたんです。やはり外国人ですから」
マリアが適当に理由をでっち上げる。確かにマリアには横浜に知人がいる。間違いではない。
それから車を飛ばして約一時間ばかり。舗装道路ばかりではないので、かなりガタガタと揺れる車内に閉口しつつも、ようやく横浜に到着した。
かえでの言っていた病院に着き、ジャックのいる病室へ向かう。
ボスは「病院に大勢で押しかけるのもなんですから」と言って車内に残った。
情報通り、彼はそこにいた。右腕と右脚にまかれた包帯とギプスが痛々しい。ジャックは入ってきた二人を見ると情けない顔で苦笑いを浮かべる。
『よく、ここが判ったな』
マリアはそれには答えずに厳しい表情のまま、
『だいたいの事情は、エイドリアンさんに聞きました』
それだけで充分だった。ジャックは小さく謝罪の言葉を呟く。
『そうか。あいつは無事に日本に着いてくれてたか』
『詳しく話してもらえますね』
マリアの表情は相変わらず厳しい。大神には会話の内容は判らないが、何となくマリアが怒っているような印象を受けた。
『……話さない訳にはいかないみたいだな』
ジャックはマリアの顔から視線をそらし、ようやくゆっくりと口を開いた。

<後編につづく>


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