『作りもののリブル・ラブル 中編』
次の日もその次の日も、瑞樹は宗介の元を訪れては色々と質問を浴びせていた。
拳銃を始めとした、銃器に関する様々な雑学的知識。人型兵器アーム・スレイブの運用や常識。特殊部隊の秘話や裏話。戦場での常識非常識。その他もろもろ。
宗介は相変わらず警戒した表情のまま、それでも彼女の質問には正直に答えていった。
ただし、彼は知識の方は豊富だが弁が立つ訳ではない。むしろ口下手の部類に入る。
だからその説明が素人には非常に判りづらかったり、はたまた全く説明になっていなかったり。
もしくは説明の途中に出てきた専門用語の解説で思いきり脱線し、何の話をしていたのか判らなくなったり。
そんな事をくり返し続けていたので、かけた日数ほど話が進んでいる訳ではなかった。
そんな二人に「乗り換えたのか?」とニヤニヤしながらからかうクラスメイトもいたのだが、それも最初のうちだけ。
純粋に質問と回答のくり返しだけなので、むしろ「なんだつまらん」とぼやく男子にかなめがつっこむ事もあった。
恒例となりつつある質問が終わったのを見計らって、かなめが話しかけた。
「ソースケ。大丈夫なの?」
「俺とて馬鹿ではない。機密事項に関する事は何一つ話していない。話しているのは少し調べれば誰にでも判るような事ばかりだ」
なら瑞樹も少しは自力で調べればいいのに。それを聞いたかなめがそう思ったのも無理はないだろう。
拳銃メーカーの公式サイトとは違い、日本にもアーム・スレイブや特殊部隊は存在するし、戦場を駆け回るカメラマンやレポーターだって、数は少ないが、ちゃんといる。
図書館に行けばさすがに日本でもそういったジャンルの本があるだろうし、インターネットも日本語で読めるマニアックではないホームページの一つや二つはある事だろう。
少し調べれば簡単に判る程度の事なら、今や一人でも簡単に情報を入手する事ができる筈である。
浮かび上がったその疑問を口にすると、
「そうした資料という物は、一つだけを鵜呑みにして信じるのはあまり感心できる事ではない。物事を公平かつ多角的に見るには、複数の視点からの資料を元にするべきだ」
「それはそうだけど……」
彼の言いたい事も判る。だが判るけれど気になる気持ちは膨らんでいくばかりだ。
かなめも瑞樹にそれとなく理由を訊ねてはいるのだが「内緒」と間髪入れずにそっけない返事がくるのみだ。ガードの固さは相当なものである。
かといって無理に聞き出そうとすればヘソを曲げてこちらを逆恨みしかねない。そのくらいは瑞樹の性格を把握していた。
稲葉瑞樹という人間は基本的に「思い立ったが即実行」タイプである。
今回のように良い方向(?)に突っ走ってくれるのならともかく。その爆発的な実行力を逆恨みに注ぎ込まれたらたまったものではない。そんな自体に巻き込まれるのは一度もあれば充分である。
それに、心配事はもう一つある。
瑞樹と話している時の宗介が、割と嬉しそうな雰囲気である事だ。
他の人が見れば、いつも通りのむっつり顔にしか見えないが、つきあいの長い――といっても一年にも満たないが――かなめには判る。
考えてみれば、自分の得意分野について聞かれているのである。おまけにこの日本では話す事も滅多にない特殊な分野。
元々マニア、もしくはそれに準ずる者というものは、自分の得意分野について聞かれた場合、相手に自分の好きな物の良さや魅力を判ってもらいたがって、必要以上に饒舌になりやすい。
本人は物を知らない相手に気を使い、親切心から懇切丁寧に細かいところまで説明をしているつもりなのである。
だが、聞く側としてはその細かな気づかいが「そこまでやらなくていい」と鬱陶しい物にしか思えず、かえって引いてしまうケースが多々ある。
かなめが宗介を諌めた際、彼は自分の使った武器や道具を律儀に解説する事が多いものの、かなめ自身そういった物には興味のカケラもないので、無視して聞き流すか「やかましい」と怒鳴って止めてしまうのだ。
だが瑞樹はそんな「引いてしまう」事でもとりあえずは真面目に聞いている。理由はともかく。
だから語る方もつい熱くなってしまう。熱い語り手には熱い聞き手が必要なのだ。
……表面上は、とてもそうは見えないのだが。
だが、二人の性格やこれまでの事から考えて、そこから仲が良くなって云々……という展開はまずあり得ない。だがそれでも、心配事というか、悩みの種が尽きないというか。
かなめの胸中の奥深くから、そんな気持ちがどうしても拭い切れないのだ。
「相良くんに構ってもらえないから寂しいんじゃないの?」
ある意味図星を突かれたかなめは言葉に詰まってしまい、反射的に恭子にツッコミを入れてしまう。
「おそらく、知識欲を満たしたいだけだろう」
最近ではメモまで取って話を聞いている瑞樹の様子を思い浮かべ、宗介は淡々と答えた。
「人間は、無駄な知識が増える事で快感を覚える唯一の生き物」と言ったのはかなめだ。
しかし、無駄な知識はそれこそ星の数ほどあるだろう。その無駄な知識になぜ銃の事とか特殊部隊の事とか戦場の事などを入れたのだろうか。
かなめも難しい顔をして腕組みをしていたが、
「まぁミズキの事だから、そう大した理由じゃないと思うんだけど……」
「それについても問題はない。良からぬ事を企んでいるようなら、いつでも始末……」
「するんじゃない」
言葉の途中でかなめのチョップをお見舞いされ、宗介はその場に突っ伏してしまった。


その翌日から、瑞樹の「猛攻」はピタリと止んだ。実際昼休みはおろか、放課後になっても来る気配がない。
それについて安堵しているような、ちょっぴり残念そうな表情の宗介を見たかなめは、
「どうしたのかな、ミズキ」
「判らん」
彼は制服の上からホルスターの中の銃に軽く触れると、
「敵の攻撃が止んだからといって、こちらの反撃の機会が来たとは限らないからな。油断はできん」
言いたい事は判るのだが、どうして例え話もこう物騒なのだろうか。例によってかなめは軽くため息をつくと、
「明日陣高だよりの製本作業があるから、来たら手伝いを頼みたかったんだけどな」
陣高だよりとは、生徒会が毎月発行している会報だ。発行といっても、原稿をひたすらコピーして、それをホッチキスで綴じただけの簡素な物だ。
だが、発行部数が多いのでそれだけに人手がいる。多いに越した事はない。そう思って傍らの恭子を見るかなめであるが、
「あ、ゴメン。明日はちょっと用事があるんだ」
申し訳なさそうに苦笑して、かなめの無言の頼みを丁重に断わる恭子。
「しょうがない。こっちからミズキのところに行くとするか」
何となく「よっこらしょ」という言葉が聞こえてきそうなほど難儀そうに立ち上がったかなめは、これまたけだるそうにクラスを後にする。
かなめ達と瑞樹は同じ学年だが、瑞樹のクラスである二組は、校舎の部屋割りの関係で渡り廊下で繋がった反対側の校舎へ行かねばならないため、距離が遠い。お隣さんという雰囲気ではないのだ。
入口から首だけひょいとつっこんでクラスの中を見回すが、瑞樹の姿が見えない。そばにいた男子生徒に訊ねると、
「さあ。鞄もないから、とっとと帰ったんじゃない?」
とそっけない返事。その気の強さが災いして友達が少ない瑞樹だけに、詳細を知っているクラスメイトがいるようには見えなかった。
「その稲葉だが、何か変わった様子はなかったか?」
唐突な宗介の問い。しかしその表情は真剣そのものだ。
その男子生徒はかなり人がいいのだろう。その真剣さを汲み取ってか懸命に思い出そうとしている。
「……そういえば、休み時間になるとノート・パソコン出して何かやってたなぁ。こんなちっこいの」
大型の手帳くらいの四角を指で作り、そう答える。
「パソコン……ねぇ」
瑞樹の家は結構金持ちらしいから、高価な電化製品の一つ二つ持っていても何ら不思議はない。
だが、わざわざ学校に持ってきてまでやる作業とは一体――などと思考を巡らせてしまうのは不自然ではあるまい。
「何かパソコンのゲームにでもハマってるのかなぁ」
「学校の機密をハッキングしているのでは……」
互いの口から出た言葉に、双方の表情が固まった。
「……ソースケ。あんたってどうしてそう何でもかんでも物騒な方向に持っていくのよ」
「君は甘い。一企業の極秘データが流出したがために大損害を受けるケースがあるだろう。この学校がそうならないという保証はない」
「自分の通ってる学校が不利になるような事してどうすんのよ」
「自分の成績の改竄。あるいは不正の証拠を掴み、それで脅迫という事も充分考えられる」
「考えるなっ!」
宗介の顔面にかなめのハリセンが力強く叩き込まれた。よろよろと二、三歩よろめいた宗介は、
「やはり判らん。一体どこから出しているのだ」
ハリセンの出所を気にしつつ、ズカズカと怒り肩で歩き去るかなめの背中を静かに追いかけた。


ところが次の日の放課後。
帰り際の瑞樹をどうにか捕まえたかなめが、
「あー、ミズキ、ちょっと」
朗らかに声をかけてみたものの、当の瑞樹はどこかムスッとした顔で、
「何。あたし忙しいんだけど」
元々の気の強さに加えて、何者をも突き放すような冷淡な声。だがかなめは気押されずに、
「実は陣高だより作るのに、人手が足りなくってさ……」
「今日は疲れたから早く帰りたいの。じゃあね」
かなめに言葉の総てを言わせずに、スパッと単刀直入な短い言葉。まるで嫌いな男から逃げるように無機質にスタスタと歩き去る瑞樹。
さすがのかなめもムッとした表情になるが「ならしょうがないか」と気持ちを切り替え、生徒会室に向かった。
その次の日の昼休み。
教室の自分の机で何やらノート・パソコンをいじっている瑞樹を捕まえ、
「ねえねえミズキ。帰りどっか寄ってかない?」
瑞樹はパソコンの画面から目を離さず、何かの作業を続けながら、
「今日は急用があるからダメ」
と、にベもない返事。取り付く島もないとはまさにこの事である。
昨日に続いてこの態度では、さすがにかなめもカチンと来る。だがそれでも平常心で、
「ところで、さっきから何やってるの?」
「何でもイイでしょ!?」
ノート・パソコンの画面を乱暴に閉じ、振り向いて怒鳴る瑞樹。
それから立ち上がり、かなめの身体をグイグイと教室の外に押しやりながら、
「あたし忙しいから、あんたの相手してるヒマなんてないの!」
「ちょ、ちょっとミズキ!?」
突き飛ばすように教室の外に押しやると、ムスッとしたまま自分の席に帰っていく瑞樹。
かなめは難しい顔でそれを見送るしかなかった。
さらに次の日。
昨日のあしらわれ方から、彼女が何をやっているのかがさらに気になってしまったかなめは、どうにか瑞樹を昇降口で捕まえると、
「ミズキ。このところつきあい悪いじゃない。何か厄介事?」
無言で上履きを履き替えている瑞樹の横顔がちらりと見えた。
その顔は明らかに何かに疲れたような寝不足の顔であった。寝ていないのか眠れていないのか。充血した目は真っ赤だし、その下にはうっすらと隈もできている。
気になった気持ちはどこへやら。心配になったかなめは思わず瑞樹の顏を覗き込み、
「な、なんか具合悪そうだけど……大丈夫?」
「平気よ。……じゃあね」
明らかに元気のない瑞樹の声。足取りもふらふらよろよろとしており、事故に遭わないのが不思議なくらいである。
それが逆に、声をかけるのをためらわせてしまったのだ。
それなのに。である。
「……ソースケは、とっくの昔に気づいてるわよね?」
「無論だ。校門のところからずっとつけてきている」
下校途中。安売りスーパーでの買い物のために一つ手前の駅で電車を下りた宗介とかなめ。後ろを気にしつつ憮然とした顔でかなめはそう言った。
自分達の後方約五メートルほど。曲り角からこっそりとこちらの様子を伺っている人影がいるのだ。
その人影とは――無論稲葉瑞樹である。彼女はドラマに出てきそうな探偵のごとく、こちらを尾行しているのだった。
だが、素人のかなめにしっかりと気づかれているのである。宗介が気づいていない訳がない。
さすがに物騒な戦場育ち。他人の気配を素早く察知するなどお手のもの、という事か。
そんな風にかなめが少しだけ感心していると、
「自身の姿や足音などには気を使っているが、素人は自分の影までは案外気が回らない。気配以前の問題だな」
淡々とした、プロらしい説得力のある口調で解説を入れる宗介。
「稲葉はこの一週間の間、ずっと俺達を尾行している」
「え!?」
宗介の言葉にかなめの表情が凍りつく。かなめが気づいたのは今日になってからだが、そんなに前からこんな風に尾行されていたとは。
だが宗介はかなめの驚き顔をひとしきり眺めた後、
「しかし判らん」
「何がよ」
「俺達を尾行している理由だ。稲葉が何らかのテロリスト集団・暗殺組織・政治結社・宗教団体とは何の繋がりも持っていない事は調べがついているのだが……」
いつ調べたんだ。そう聞きたい気持ちをぐっと飲み込むかなめ。
どうせ聞いたところでこっちに判るよう答えるタマではないし、それ以前に聞く気など全くない。
「千鳥。それ以外の組織や団体の存在に、何か心当たりはないか?」
「ねーわよ」
顔見知りを悪し様に疑ってかかれるその度胸と思考回路に、思いきりげんなりとしているかなめ。
この間までしきりに宗介に物騒な知識を聞き込んでいた事といい。こうして自分達を尾行している事といい。
このところの瑞樹の行動は謎ばかりである。
どうせ大した理由ではあるまいと、かなめもあまり気にしないでいたのだが、こうして尾行までするとなるとさすがに気味が悪くなってくる。いくら顔見知りとはいえ。
だが迂闊に訊ねれば、瑞樹の直情的な実行力が全てネガティブな方向で発揮される事は明白。それは前にも考えた事だ。
「こうしてあえて放置しておけば尻尾を出すかと思っていたのだが、その様子もない」
宗介が今までにないくらい真剣な顔で考え込んでいる。
「……やはり泳がせるのではなく、捕えて尋問すべきか」
「やるな!」
間髪入れずにかなめの拳が彼の後頭部にヒット。
「あんたって人は。尋問って何よ尋問って。そんな物騒な事考えてんじゃないわよ」
肩を怒らせて宗介を睨みつけるかなめ。彼は殴られた後頭部を気にしつつ、
「ただ聞くだけだ。稲葉の出方次第では、手荒な方法にはなるかもしれんが」
「なるな!」
同じところに再びかなめの鉄拳が飛んだ。
「よくもまぁ顔見知りにそこまでの事ができるもんね、あんたは……」
「顔見知りとはいえ油断はできん。人間寝返る時はすぐ寝返るものだ」
相変らずの物騒な思考に再びげんなりとしつつとぼとぼと歩くかなめ。だが、そんなかなめに声をかけてきた人物がいた。
「学生さん、ちょっと済まないけど……」
その声に振り向くと、どこにでもいそうな凡庸なスーツ姿の中年男性が立っていた。
彼の手にはインターネットにあったとおぼしき地図がプリントされたコピー用紙が。
「ちょっと道を訊ねたいんだが……」
「道ですか? どこへ……」
その時かなめの身体がぐいと後ろに引っぱられ、言葉は途中で遮られた。彼女と入れ替わるように男と対峙していたのは警戒心を剥き出しにした宗介だ。
その手にいつの間にか引き抜いたコンバット・ナイフが握られていた。彼は空いた片手で男の胸ぐらを掴み上げ、すぐそばの電信柱に押しつける。
「なっ、何を、ひっ……!?」
かろうじて口を開きかけた男は、眼前に突き出されたナイフの切っ先を見て悲鳴を飲み込む。
「貴様何者だ。何の目的で彼女にちかづ……」
今度は宗介の言葉が途中で遮られた。もちろんかなめが後ろから殴ったからである。しかも鞄(それも角)で。
宗介は苦悩した顔のまま首だけかなめの方を振り向くと、
「……今不審人物を尋問している最中なのだが。邪魔はしないでくれないか」
「やかましい! どこが不審人物よ。道を聞きたいだけじゃない」
「判っている。女性に道を聞くというのは、ナンパの常套手段だと聞いた事がある」
その口調は、まるでRPGに出てくる村の長老が「近所の洞窟に素晴らしい宝物が隠されているらしい」とうわさ話を語っている時のようであった。
「確かに俺は日本の常識にはうとい。しかしそこまで無知ではないぞ。危険だ。下がっていろ」
「ちょ、ちょっと待った。ナンパのどこが危険なのよ」
言いながら「まぁ確かに安全とは言い切れないけど」と思うかなめ。
しかしここは駅前。繁華街。いくら世知辛く他人に干渉をしない世の中とはいえ、さすがにこれ以上人々の注目を集める訳にはいかない。
そう決意したかなめは後ろから宗介の頭を鷲掴みにすると、
「済みませんっ。弟が大変失礼な事をしまして……」
かなめは自分が頭を下げると同時に、鷲掴みにした手に渾身の力を込めて、宗介の頭を無理矢理下げさせる。
「どうも済みませんでしたっ」
「千鳥、君は何を……」
訳の判らぬまま頭を下げさせられた宗介が、かなめに文句を言おうとした時、急に背筋に猛烈な寒気を感じた。
その寒気の元は……かなめの殺気立った目だった。その殺気たるや、戦場を知る宗介が息を飲み、そのまま呼吸ができなくなるのではと思うほど冷たいものだった。
宗介はそのままかなめの手でガクンガクンと強制的に何度もおじぎをさせられ、その後急いで二人はその場を離れた。
数百メートルを一気に走り抜けてその辺の脇道に入った途端、かなめのボリュームを抑えた怒鳴り声が響いた。
「こんなところであんなもん振り回すんじゃないって、何回言ったらわかんのよ!」
「不審人物相手には必要な……」
「必要ない! だいたいここが日本だって事忘れてんじゃないでしょうね?」
もはや恒例行事のような、かなめによるお説教が始まった。日本国内で銃やナイフは全く必要がない事を、しつこくくどくどと言い含める。
最近は物騒になっているとはいえ、銃やナイフで対応するのは過剰防衛もいいところなのだと。
言い疲れたかなめが、肩でゼーゼー息をしているのをきょとんとした顔で見ていた宗介は、少々遠慮がちに口を開いた。
「ところで千鳥。聞きたい事があるのだが」
「何よ?」
怒りと疲れのあまり、疲れて気の抜けた返事が返ってくる。
「俺はいつから君の弟になったのだ? 訳が判らんのだが」
かなめは何を言われたのか、一瞬判らなかった。しかしゆっくりとこれまでの事を思い出していき、やがて思い出した。
「その場しのぎの言い逃れに、理由や理屈を求めるんじゃないっ!」
思わず手が出たかなめだが、その勢いはやはり気が抜けたものだった。

<後編につづく>


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