『間違えられた話 壱』
今日も清々しくも慌ただしく迎えた巴里の朝。
その朝の中、大神一郎はようやく馴染みとなったカフェテラスで朝食を満喫していた。
サクッとした歯触りのクロワッサンと、少し渋みを感じる黒いコーヒー。
巴里に来た当初はそのメニューを「油っこいパンに苦いコーヒー」と閉口していたものの、慣れというのは恐ろしい。
彼とて痩せても枯れても日本人。白い米の飯と熱い味噌汁を腹一杯かき込みたいという気持ちは、多少なりとも残っている。
だが彼はこう見えても本来の身分は日本の海軍中尉。クロワッサンではないもののパンの朝食というのは海軍の兵学校時代に味わっている。
分刻みのスケジュールで訓練を続けていた生活の名残りか、食事をゆっくりじっくり時間をかけて、というのがなかなかできない大神は、あっという間にそれらを片付ける。
ボロロ〜ン。
そんな時、後ろから調子外れのギターの音が響いた。
「いよぉ、大神。朝はいいなぁ。忙しいけど」
聞き慣れた男の声に、大神は振り向く事なくテーブルに両肘をつき、手に顎を乗せて、軽くため息一つ。
大神に声をかけてきたのは加山雄一である。彼と同じく海軍の人間で、兵学校時代の同期生でもある。
軍人らしからぬノリの軽さと神出鬼没な胡散臭さはあるが、主席で卒業した大神に負けず劣らずの実力者でもある。
「……何だ。振り向いてもくれないとは。そこまで邪険にされるとは思ってもみなかったぞ、大神?」
さめざめとした雰囲気の彼の言葉に、大神は「仕方ない」と覚悟を決めて振り返る。
いつものように白いスーツに赤いシャツ。白黒まだらのネクタイを締め、これまたトレードマークになりつつある白いギターを構えている。
……なぜか書き割りの前で。しかも書かれているのは、青空にかなり安っぽい絵柄のエッフェル塔――とおぼしき建物である。
(ここは巴里なんだけどな)
大神の冷めた視線をものともせず、加山は胸を張って、
「どうだ。少しは驚いてくれたか?」
「ああおどろいたおどろいた」
大神はかなり投げやりに言い放つと、さらに続けた。
「加山。お前も好きだなぁ」
「ああ好きだぞ。お前を驚かせるのは俺の趣味だからな」
加山は彼に断わる事なく空いていた向かい側の席に座ると、傍らにギターを置きつつ、注文を取りに来たウェイトレスにバゲット(フランスパン)を注文する。
大神は両肘をついた姿勢のまま、
「こんな朝から何の用だよ?」
どこか呆れ顔の大神の視線などどこ吹く風とばかりに受け流した加山は、
「つれないなぁ、大神。せっかくお前のためにと思って、とっておきの情報を持ってきてやったっていうのにその言葉。親友として悲しいぞ、俺は」
袖で涙をぬぐう真似をしつつ切々と訴える。その仕種は演技と判っていても彼の言葉を聞かねばならない気分にさせてしまうから不思議だ。
「とっておきの情報って?」
話に食いついてきた大神の言葉に、加山は一転して真面目な顔になると、
「……<カシハラ>って覚えてるよな?」
「当たり前だろう。今でも覚えてるよ。初めてだったんだから」
「二月ほど前、<カシハラ>が事故に巻き込まれてな……」
加山は意味ありげにそこで一旦言葉を切る。傍らのギターの弦を軽くピンと弾き、
「……もう、長くはないだろうな」
その加山の言葉に、大神の表情がすっと暗い物になる。
「そうだな。でも<彼女>もよく頑張ったよ」
彼もカップに少しだけ残ったコーヒーに目を落として呟く。
そこに写る、在りし日の<カシハラ>の姿。だがその細部はぼんやりとぼやけてよく判らない。
生涯忘れまい、と誓った筈がこの体たらく。大神は自分自身を叱咤するように残ったコーヒーを一気に飲み干すと、
「もう<彼女>に会えないと思うと悲しいけど、これも天命だ」
大神は席を立ち上がると「もう時間だから」と言って、大急ぎで勘定を済ませるとカフェテラスを飛び出して行った。


軍艦に限らず船舶一般を「女性」になぞらえる事がある。
「男達を包み護る母親だから」や「男達が護らねばならない恋人だから」など、その理由は諸説ある。
もちろん二人の会話は<橿原(カシハラ)>という艦の事を言っている。
日本海軍に属する老朽練習巡洋艦であり、大神達が兵学校時代の演習で初めて載った艦でもあった。
その練習巡洋艦<橿原>が事故に巻き込まれて大破。近い将来廃棄されるであろうという話題。
それで終わる……筈だった。
この二人の一連の会話を、聞くとはなしに聞いていた人物が一人いたのだ。
そこから話がちょっとばかりややこしい事になる。

■■■■■■■

その日の夜。
巴里の町はモンマルトルにある小さな劇場「シャノワール」。劇場といっても、そのスタイルは食事を楽しみながら観劇するスタイルだ。
今の大神の就職先でもあり、彼はここで表向きはボーイとして働いている。
今日のステージを終えて着替えたコクリコは、注意深くキョロキョロと辺りを見回していた。
「花火。花火。ちょっと来て?」
楽屋のドアを少しだけ開けて首だけ出した状態のコクリコが、黒い服(見る人が見ればそれは喪服だと判るが)の花火――北大路花火を小声で呼び止めた。
当の花火は少しだけ首をかしげると、言われるままに楽屋に入る。
コクリコは再度周囲を見回した後に急いで扉を閉めて、鍵までかけてしまった。それからも部屋の中をあちこち調べている。その警戒する様子は尋常ではない。
その間花火は適当な椅子にちょこんと腰かけて、コクリコの様子を眺めていた。
「どうかしたんですか?」
だがあくまでも静かに、そして年下であるコクリコにも丁寧な言葉で訊ねる花火。
充分と思えるほど調べたのだろう。ようやくコクリコは椅子を引きずって花火の前に来ると、
「ねぇ花火。花火は日本語判るよね?」
小さい声でそう切り出してきたコクリコ。
当然である。今でこそこうしてフランスで暮らしているが、元々花火はその名前の通り――祖母がフランス人ではあるが――れっきとした日本人。
彼女自身日本で過ごした記憶はないが、親である北大路男爵の方針で「日本の大和撫子たれ」と育てられてきた。
それに加え、フランスの――しかも江戸時代頃の書物とはいえ、花火自身も彼女なりに「大和撫子」になろうと日々努力している。
だから、日頃使う機会がないとはいえ、日本語の読み書きは全く問題ないレベルまで修得していた。
花火の無言だが優しげな笑みを肯定と受け取ったコクリコは、
「日本語の『テンメー』って、何の事か判る?」
「『テンメー』ですか?」
花火は「テンメー、テンメー」と小声で言葉を繰り返し、自身の記憶の中から単語を引っぱり出そうと懸命になる。
「もしかしたら『天命』の事でしょうか?」
コクリコは「う〜ん」と唸りつつも、
「それかどうかはよく判らないけど、『これもテンメーだ』って……」
「多分この『天命』でいいと思います」
「どんな意味なの?」
矢継ぎ早のコクリコの質問。それにも花火は静かに微笑んだまま、
「運命、みたいな意味ですね」
「運命……」
花火の答えに、コクリコは難しい顔をして黙り込んでしまった。
コクリコは日本人ではない。詳細は聞いていないが、ベトナム生まれだ。
両親を亡くし、サーカス団に拾われる形で入団して世界を回り、このフランスにやって来たそうだ。
今はサーカス団とこのシャノワールのステージの二足のわらじの生活である。
だが「コクリコ(ひなげし)」という名前は明らかにフランス語だ。過去フランスの植民地だったベトナム人なのにフランス語の名前。
これだけでも彼女の生い立ちが平坦でない事は容易に想像がつく。そんな風に生まれた自分の「運命」を思い出したかのようだ。
「ところで、どこで『天命』という単語を聞いたんですか?」
だから花火は、黙り込んだままのコクリコにそっと訊ねた。
「……うん。今朝、イチローとそのお友達の話を、聞いちゃったんだ」
家族というものに恵まれなかったコクリコは、まっすぐでいざという時頼れる大神にすぐなついた。
その彼から日本語の単語はいくつか教えてもらったそうだから、日本語の会話でもところどころなら判るのだろう。
「そうしたら『カノジョに会えない。これもテンメーだ』なんて言ってたんだ。何かすっごく悲しそうな顔だったから、ボク、気になって」
「もう会えない」「天命だ」の言葉だけでは何とも言えないが、大神の知っている女性が行方不明にでもなってしまったのだろうか。
もしくはその女性と死に別れてしまうのだろうか。そんな「運命」が彼の元に訪れようとしているのだろうか。
花火は我が事のように暗い顔で黙り込んでしまった。
運命。その単語には花火にも引っかかる所があるからだ。
その「運命」は、彼女から大切な人を永遠に奪い去ってしまったのだから。


一年前。花火はフィリップ・ディ・マールブランシュという男性と結婚する筈だった。「だった」というにはもちろん理由がある。
結婚式が行なわれた新造の豪華客船が、式直前に事故により大破。沈没という目に遭ったからである。
その事故によりフィリップは帰らぬ人に。花火自身も元々社交的で開放的とは言えないその心の内をさらに閉ざす事になってしまった。
今でこそ、大神の尽力で普通の女性のように振る舞えるようになった花火だが、事故の後遺症からか水が苦手になってしまい、現在も喪服を脱げずにいる。
どことなく暗い顔になっていた花火だが、楽屋の入口の方で聞こえた小さく「カチン」という音に身を固くする。
同時に内側からかけた筈の鍵がなかったかのように、入口が大きく開いた。
「何やってんだい、こんな所でコソコソと」
緑のコートをひるがえして入ってきたのはロベリア・カルリーニだった。
巴里始まって以来の大悪党の名をほしいままにする彼女は、表向きはサフィールという名のロマ(ジプシー)のダンサーとしてこのシャノワールにいる。
「花火とコクリコではないか。どうしたのだ、一体?」
続いて入ってきたのはグリシーヌ・ブルーメール。花火とは寄宿学校に通っていた頃からの仲で、彼女とは対照的な性分の少女である。
流れるような金髪に、名門貴族の名に恥じぬ正義と意志の強さを秘めた瞳が二人を見据える。
最後に入ってきたのは、真紅の法衣を纏う快活な少女だった。
「こんな所に閉じこもって、一体どうしたんですか? 懺悔だったらこのわたしが一手に引き受けますよ!」
両手を固く組んで力説するのはエリカ・フォンティーヌ。外見の通り神に仕えるシスターではあるが、奉仕の精神と自身の行動がチグハグで周囲に迷惑を振りまいてしまう、いわばトラブルメーカーである。
いきなりの闖入者に花火とコクリコは呆気に取られていたが、
「驚くなよ。あんな鍵、かかってないのと同じだって」
ロベリアが呆れた顔でドアの鍵を指差す。
「そうですよ。泥棒のロベリアさんにかかったら、どんな鍵もすぐに開いちゃうんですから」
エリカのシスターらしからぬ一言に、彼女以外の全員が疲れた顔になる。グリシーヌは「違うだろう」と一言漏らし、
「花火。コクリコ。こうして鍵をかけてまでの密談とは尋常ではないな。それは我々に話せぬ事か?」
過ぎるほど真っ直ぐな目で二人を見つめるグリシーヌ。その視線に射抜かれたように身を小さくしていたコクリコが、
「話せぬっていうか……。日本語の事だったから、花火に聞いてたんだよ」
苦笑いを浮かべてそう言い訳をするが、そこにロベリアが割って入る。
「日本語なら隊長でもいいじゃないか」
その一言にコクリコの苦笑いが一瞬だけ凍りついた。もちろんそれを見逃すロベリアではない。
「隊長には話せない事か。金にはなりそうにもないが、気にはなるねぇ」
何もかも見抜いているぞ、と言わんばかりの意地悪そうな笑みを浮かべてコクリコを横目で見る。
隊長とは無論大神の事だ。
このシャノワールの真の姿。霊的な力で巴里の町を守る「巴里華撃団」。
ここがその本部であり、彼女達五人がその隊員であり、大神はその隊員をまとめる隊長職を勤めている。
ロベリアは右手首から下がる鎖を、わざと音高くジャランと鳴らし、コクリコを横目で見たまま、
「さ。キリキリ話してもらおうか?」
「待てロベリア! 仲間を拷問する気か!?」
ロベリアの取った態度に、グリシーヌが真っ向から立ちはだかった。後ろにコクリコと花火をかばい、鋭い目でロベリアを睨みつける。
しかしロベリアも伊達に大悪党と呼ばれている訳ではない。殺気すら感じるその視線を涼しげに流すと、
「アタシ達は仲良しクラブじゃないんだ。ヘラヘラしてりゃいいってモンじゃない。ひっこんでな」
「ロベリアさん、ダメですよ?」
殺気立つ二人の雰囲気を全く理解していないようなエリカが、ほんわかした態度で割って入る。
「どんな理由でもケンカはいけません。暴力は何も産み出しません。そうだ。これはお塩の出番ですね」
エリカはそう言うと、どこからかバケットと塩の入った瓶を取り出した。何でこんな物を持っていたのかは判らない。おそらくエリカ本人に聞いたとしても。
「お塩は物を浄め、腐敗を防ぎます。それは人間関係も同じ。お塩と一緒に物を食べるという事は『変わらぬ友情』を表わすんですよ。これは聖書にもきちんと書かれている、とっても有難くて、とっても大事な事です」
エリカは一人でうなづきながら、シスターらしく皆に解説する。
「……おい。それとこれとどう関係があるんだ?」
おそらく聞いても無駄だろうな、と判っていても、ロベリアは渋い顔のままエリカに訊ねた。するとエリカはぱあっと明るい笑顔になり、
「つまり。わたしはお腹が空いたので、皆さんと一緒にごはんを食べたいという事です」
全然繋がってない。エリカ以外の全員の表情がそう語っていた。
「美味しい物を食べれば、それだけで幸せな気分になれますよ。特に、大勢で食べるごはんは本当に美味しいんです。みんなが幸せになれば、ケンカする必要なんてありません」
「一人でやってろ」
完全に脱力されてしまったロベリアが呟く。するとエリカは彼女の顔を間近から覗き込むと、
「ですから、みんなでごはんを食べましょう。ごはんを食べて、みんなでハッピーになりましょう」
「ハッピーなのはお前の頭の中だろうが!」
「えっ、わたしハッピーなんですか!? エリカ大感激ですぅ!」
と、エリカはそのまま勢いよくロベリアに抱きついた。
「ロベリアさ〜ん♪」「放せ、このバカ!」という二人のやりとりを背に、グリシーヌが訊ねた。
「……話を元に戻すが、二人がしていた話とは、我々には話せぬ事なのか?」
「話せないって訳じゃないんだけど……」
コクリコは言葉に詰まってうつむき、そして花火の方をチラリと見た。
自分の事ならともかく、この話題の元は大神の事。彼に心配や迷惑をかけたくない、という気持ちがコクリコにはあった。その気持ちは花火にも判る。
ところが、グリシーヌは笑顔を浮かべると、
「それならば良い」
その一言で終わってしまった。いつもなら「ハッキリしろ!」と怒鳴りそうなものなのに。
「隠し事をされているようで落ち着かぬのは事実だが、誰にでも話したくない事や秘めておきたい事はあるだろう。無理に話さずとも良い」
「おいおい。随分な差だな」
どうにかエリカの「拘束」を逃れたロベリアがグリシーヌにからむ。
「これが隊長なら『ハッキリせぬか!』って怒鳴り散らすくせして」
聞こえるような小声でボソッと言った彼女の言葉に、
「……どうも泥棒という輩は、コソコソした事がお好みのようだな。自分の意見すら堂々と言えぬとは」
ぐるりと首を回してロベリアの方を振り向くグリシーヌ。一方ロベリアはわざとらしい演技と見え見えの驚いた顔で、
「あ、聞こえちゃってたかぁ。悪い悪い」
語るまでもないが、ロベリアは悪いなどとはこれっぽっちも思っていない。
「そっちこそ人によってコロコロ態度を変えるなよ。それが正義のお貴族様のする事か?」
「人の道に外れた行いをする泥棒風情に言われたくないわっ!」
堪忍袋の尾が切れた、と言わんばかりのグリシーヌが、どこからか出した愛用のポール・アックスを振りかざす。
斧の刃ではなく槍のように尖った先の部分をロベリアの眼前に突きつけると、刃の鋭さに負けぬ声で怒鳴る。
「この私を怒らせた事、その身を以て悔いるがいい!」
「……それでケンカ売ってるつもりか? けど。やるんなら相手になるよ?」
だが左手をコートのポケットに入れた自然体にもかかわらず、一部の隙もないロベリアの立ち姿。彼女は右手の中に持ち前の霊力で炎の塊を産み出したが、どちらもそのまま動けずにいる。
グリシーヌの鋭い殺気がこもる視線と、ロベリアの静かな挑発を含む視線がぶつかりあう。
かたや武に優れた名門貴族。かたや巴里の歴史に名を残す大泥棒。
ただでさえ小競り合いの絶えない、あらゆる事が違い過ぎる二人だ。この二人がまともにぶつかりあったらただでは済みそうにない。
「ちょ、ちょっと二人ともやめてよ!」
コクリコが止めようとするが、二人ともまるで聞いていない。
花火がどうしたものかとオロオロしている時、エリカがまたも二人の間に割って入る。
「神は申されました。右側から殴られたら左側からも殴られなさい、と」
……それを言うなら「右の頬を叩かれたら、左の頬を向けなさい」だろう。この場の皆はそう思った。
「ですから、右側からロベリアさんが、左側からグリシーヌさんがわたしを殴る事で怒りが収まるのでしたら、遠慮なくやっちゃって下さい」
一瞬この場がシーンとなる。誰もがエリカの言葉に絶句するやら唖然とするやら。実に気まずい空気が場に満ちる。
「判ったよ。全部話すからみんなもうやめてよ!」
その雰囲気に耐えられなくなったコクリコが、泣きそうな顔で皆に訴えた。すると、
「最初から素直にそう言えばいいんだよ。さ、話しな」
挑発めいた態度はどこへやら。スイッチで切り替えたようにスパッと変化したロベリアの態度。
「はーい、わたしも聞きたいです!」
その後になぜか嬉しそうなエリカが続く。さっき自分で言ったばかりの事をすっかり忘れたようなこの態度。グリシーヌとロベリアが彼女に食ってかかった。
その喧噪の中。話す事にした理由を、花火は思い切って訊ねてみた。
「ところでコクリコさん。どうして皆さんにお話しする気に?」
するとコクリコは半べそをかいて、
「しょうがないよ。それが一番平和に収まりそうだったんだもん」
そう力なく呟くコクリコの顔は、一番年下にもかかわらず一番大人びて見えた。

<弐につづく>


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