軽々しくいこう! 8「パロディのオリキャラ」


ココをお越しの方も、二次小説をお書きの方はいらっしゃると思います。
二次小説を書く上で、時として必要になってくるのが「オリキャラ」。オリジナル・キャラクターであります。
ところが、この「オリキャラ」。上手くやらないと、これほど扱いに困るものはないのであります。


このサイトにお越しになる方でファンが多い「フルメタル・パニック!」を例にとってあげましょう。
判らない方のために概要を一応説明しますと「ヒロインを極秘に守るため主人公がやってきた」というパターンです。
主人公は極秘の対テロ組織所属の少年軍曹。年齢の割に実力のあるエリート軍人です。
が、今まで諸外国の戦場で戦争漬けの人生を送ってきたので日本の事が全く判らず、銃は撃つ、爆弾は使う、あらゆる危険に過敏に反応する……と判断基準が戦場のまま。そのためヒロイン他多数から「常識知らずの戦争バカ」という評価をされてしまう。
おまけにバカがつくくらい真面目で実直な性格のため、戦争以外の事になると誤解と勘違いもしばしば。その辺のギャップがこの話の面白い部分の1つでもある訳ですが。
管理人が、他所のサイトで見かけた「フルメタル・パニック!」のオリキャラで、少々疑問を感じたパターンは、主人公の元に同じ組織のオリキャラが来たというモノ。
そのキャラは主人公と互角それより強く、しかもある程度「日本の一般常識」を持っているので比較的周囲に溶け込んでいける方です。


二次小説。つまりパロディな訳ですから。彼(彼女)以外のキャラクターは、他の方が作ったものです。
他の方が上手に作ったものより、たとえ下手でも自分で作ったものの方が愛着も湧く思い入れも強くなります
世の中そんなものです。
その思い入れが『せっかく作ったんだし、やっぱり活躍させたいよね』という思いに繋がります。だから出番が増える。その気持ちはよ〜〜く判ります。
ただ、出番が多い事そのものは良いのです。ですが、ちょっと考えてみて下さい。
そのオリキャラが味方だった場合、状況によっては非常に困る事になります。
オリキャラが主人公で、元の作品の登場人物達が脇役に徹しているストーリーならば、さほど問題も起こりません。「こういう話もアリだよね」で済んでしまうものです。
が、主人公達の活躍する本筋の(もしくは本筋に酷似した)舞台にオリキャラがやってきて彼等を喰うほどの活躍をする。
だけど話の主人公は、あくまでも元の作品のキャラ(達)。これでは肝心の主人公の影が薄くなり、ホントに誰が主人公なのかさっぱり判らなくなります。
……実際、影が薄い主人公という話もありますが(笑)。
どんな話でも、基本的に主人公が話の中心になるのは当たり前です。
ですが「本来の主人公(元々の作品中の人物、の意味)はこの人だろうけど、なんかオリキャラばっかり目立ってるなぁ」という話の場合、上で述べた「元の作品の登場人物達が脇役に徹しているストーリー」でない場合は、主人公が複数いる(ように見える)事になるので誰が話の中心――物語の中の「視点」と言ってもいいかもしれません――が判らない状態が平気で起こってくれます。
それがはっきりしていない話は「……面白いんだけど、何かよくわかんない」という評価になる可能性があります。
それに作品のファンは「その作品のキャラの」活躍が見たいという人が大半な訳で、下手をすると「書いた本人だけが楽しい」という自己満足オンリーになりかねません (もっとも、こういう活動は自己満足でしかない面は否定致しませんが)。
だからと言って、話の主人公が誰もいない話っていうのはオススメしかねます。
でも実際は、複数のキャラが主人公のお話というものは沢山あります。現に管理人の書く「Baskerville FAN-TAIL」も複数のキャラが主人公です。特定のキャラクターが主人公である、という事はありません。
主人公(もしくは目立つキャラ)がたくさんいても『その話の中心人物』は誰なのか、はっきりさせておけば大丈夫でしょう。そうすれば「よくわかんない」という事態は防げると思います。
しかし、大なり小なり「戦い」があるお話ならば、その「敵」がオリキャラという事は充分あり得るでしょう。
やはり「敵」な訳ですから、弱いよりは強い方が話は盛り上がります
いかにその強い敵に勝つか。いわゆるピンチからの逆転劇。ロボットアニメの王道ですが、そうでない場合でもやはり王道だと思います。
ここに「オリキャラは活躍させたい」の理論が働くと「どうやっても主人公側に反撃の要素が見つからない」モノになる事があり得ます。敵の活躍という事は、主人公側のピンチに直結しますから。
これは「主人公が死んで終わる」話以外では絶対にやってはいけないものです。
しかもこの法則は「ホントはやりたくないけれど、止むに止まれぬ事情(人質をとられている等)で敵に回った強い人」だと、冗談抜きでいかんなく発揮されるでしょう。
日本人はこういったタイプのキャラに弱いですから。
そうなると主人公側の反撃要素が見つからなくて話に詰まってしまい、やがてほっぽり出して、途中で止まってしまう。もしくは話がムチャクチャか尻切れトンボ
その辺のバランスが結構難しいんですよね、実際。


確かに二次小説というのは、既存の話を自分の好きなようにいじくりまわせる所に、楽しみの1つがあります。
そこに書き手の『ファンとしての「思い入れ」』が加わるために「それ、ちょっと違うんじゃない?」とツッコミを入れたくなるケースもあるでしょう。
「そんな細かい事言うなよ。好きでやってる事なんだし、素人なんだから」という意見もあるかと思います。
でも、あくまで自分のオリジナルではなくパロディな訳ですから、元の作品を変えてしまう事だけは、決してやってはいけません。
元の作品でまだ語られていない過去・現在の部分や、「もしも」の未来の話なら、色々と考えて手を加えるのは仕方のない事でしょう。
だけど「これをやったら作品が崩壊するわな」という事。「いくら『思い入れ』があろうとも、こういう事はあり得ないよな」という事。
いくら「好きなようにいじくりまわせる」といっても、やっていい事と悪い事があります
それをやってしまったら、それはもはやパロディではなく、単なるパクリ作品です。


話が脱線しましたが、二次小説の「約束」ごととして『いかなる理由があろうとも、元の作品の破壊・変更をしてはいけない』というのがある事はご承知下さい。
これは「かたい事」や「細かい事」ではなく、守らなければならない最低限の「ルール」です。
たいがいの場合、二次小説に登場するオリキャラは『思い入れ』がどうしても入るので目立つ・強力すぎるものが少なくありません。
自分の作ったキャラクターが、大好きなキャラとともに過ごす。ファンにとっては夢も同然。その『せっかく作ったんだし、やっぱり活躍させたいよね』という「夢」が投影される訳ですから当たり前かもしれません。
強力な方が何でもできていい、と思う方もいるでしょう。が、それは「甘い」と言わざるを得ません。
そんな強力なキャラクターがいるのであれば、他のキャラクターが必要ないじゃないですか。
1人で何でもできてしまう、いわば回数制限のない必殺兵器。よっぽど使いどころを考えないと、1人で総てを片づけてしまう。元の作品のキャラクターの影も立場もまるで無くなります。
これでは「大好きなキャラとともに過ごす」という感じでは無くなりますから、一歩間違うとあっという間に作品世界が崩壊します。そういうのを「パロディ」とは言わないでしょう。
「フルメタル・パニック!」で考えてみましょう。
前に挙げたような『主人公より強くて日本の適合性バッチリの人』がいた場合、普通に考えたら、最初からその人が護衛にくる筈でしょう(単に「強い」では非常に曖昧ですが)。
少しでも「適任」と判断できる人物に仕事をさせるのは、どんな組織だって当然の事です。
最初から「主人公を護衛に派遣しない」という身も蓋もない展開になる事も考えられます。
現に主人公は色々と大騒ぎを起こしている訳ですから。極秘の護衛が騒ぎを起こすのでは、いくら何でも組織としても無視できないでしょう。
実際には色々思惑があるからそうなりませんし、それに、原作の方で護衛の交代劇という展開はありました(結局は元の鞘に納まりましたが)。
主人公より(いや、彼より強い人は沢山いるだろうけどね)桁ハズレに強くて適応力もあるのに『単なる「助っ人」』というのでは、上のような事情からもちょっと不自然ではないでしょうか?
キツイ言い方をするのなら、そういうキャラの存在や、作品そのものがおかしくなる可能性を秘めています(理由は上の通り)。
しかし、それでも「単なる助っ人」であるという説得力ある「理由」を説明する事ができますか?
……できなかった方。もしくは説明だけで長文になった方。あまりにも説得力のなかった方。残念ですが、そのオリキャラは作り直した方が良さそうです。


あまり深刻になる必要はないと思いますが、突き詰めて考えれば、このくらいの思考はどうしても必要になります。
それに、文章で書くとどうしても堅く、深刻に受け取られがちです。
何も「パロディにオリキャラを出すな」と言う気は全くありません。むしろやるべきです。ですが、ちょっとくらいは気を使いましょう。
イメージは壊せない。でも特徴を作らない訳にはいかない。しかし活躍はさせたい。だが目立ち過ぎて元のキャラを喰うのはご法度。
そんなジレンマを抱えたオリキャラ作成はくれぐれも慎重に。大好きな作品を、自分の手で壊したくはないでしょう?
「過ぎたるは、及ばざるがごとし」。この言葉を肝に命じておきましょう。


※これは2002年03月18日の「(多分)日刊日記掲示板」に添付された物を編集・加筆修正したものです。


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