『ポーカーフェイスの賭博師(ギャンブラー) 後編』
再びゲームが再開された。南三局は、結局誰もあがれず、流局となった。
そして、迎えた南場四局オーラス。親は、北のヤクザである。
「へっ、今回も調子がいいぜぇー。ラスなのによぉー大丈夫なのかぁー」
北のヤクザがほざいている。
わざわざ自分の手の進行を状況を教えるとは、馬鹿な奴である。そして、林水先輩の順番だ。
山の牌を自摸ろうとする。その時、
ゴンッ!!!!
いきなり、先輩が卓を蹴った。明らかに、わざとである。
「失礼。足が当たってしまった」
その瞬間、コロン、コロンと音がする。何か床に落ちたようだ。
見ると床には、四枚の牌が落ちてる。卓上では、北と西のヤクザの手牌が二枚づつ少ない。
「てめ〜ら、露骨にやり過ぎなんだよ」
その光景に、陣内が口を開いた。
「じょーちゃん、わかったかい?」
「全然……」
陣内の話だと、あの二人はイカサマをしていたらしい。
卓下で、有効な牌を交換し合う技だ。通称エレベーターと言うらしい。
それで、かなめも納得がいった。
どうりで、あがるのが早いはずである。二人分の牌で、役を作っているのだから。
どうやら、早くあがった時は、全部このエレベーターをやっていたようだ。
「ちょっとー、あんたら汚いわよ!!」
かなめは、椅子から立ち上がると叫んでいた。
「よせ。千鳥くん。彼らは、そういう相手なのだよ。私は、そういう相手とわかって勝負しているんだよ」
「でもっ!!」
「千鳥。よせ」
宗介までもが、かなめを制止する。
「閣下には、お考えがあるようだ」
「さあ、ゲームを続けようか。でっ。どっちが、どっちの牌なのかね?」
涼しい顔で言う。さすがに、この態度には陣内も唖然としていた。
普通なら、ペナルティーを架して当然である。だが、林水先輩はそうしない。
つまり、今までのイカサマを黙認するということだ。
普通なら、勝負事体をなしにすることだってできる。
しかし、そうしたら二度とヤクザは勝負を受けないだろう。
ということは、土地の権利書は返ってこない。先輩は、そこまで考えているのだ。
少しギクシャクした感じがあるが、ゲームは再開された。
そして、宗介、西のヤクザ、北のヤクザと順々に牌を捨てていく。
北のヤクザが捨てたのは、一萬だった。
「千鳥くん。所詮、彼らの技は、小手先のモノ。大局が読めない人間は、勝者には成り得ないのだよ」
先程まで無口だった先輩がいきなり喋りだした。
「ギャンブルで身を破滅させる者、薬に溺れる者、結構なことだ」
「あんっ、てめーなに言ってやがる。とっとと、牌を自摸りやがれ」
「まあ、待ちたまえ」
「あっああーーー」
また、変な唸り声をあげる。威嚇しているつもりだろうが、そんな脅しは効きはしない。
いつものポーカーフェイスでサラッと受け流す。
「閣下がお話中だ。黙っていろ……」
コンバット・ナイフをちらつかせる宗介。よっぽど、こっちの方がヤクザに近い。
その姿に押し黙るヤクザ達。
「千鳥くん。私は、彼らの存在を否定しているわけではないんだよ。現在の社会体制を考えると、彼らのような人種が生れてくることは仕方のないことだ。むしろ被害者といってもよい」
ヤクザを前に、自分の考えをつぶさに語る。その姿は、まるでヤクザを諭す高僧のようである。
そして、高校生に諭されるヤクザ達。恥ずかしい光景だ。
「はあ、そんなもんですか……」
ヤクザが被害者という理論には、イマイチ納得いかない。だが、延々そう言われるとそんな気がしてくるから不思議だ。
「だが、何も知らない人間を騙して、金品を巻き上げる。それは、許せない」
林水先輩の眼鏡の奥の瞳がキラリと光る。
「では、あがらせてもらおう。ロンッ、国士無双」
そこには、かなめもよく知っている手役があった。国士無双、役満である。つまり、三二〇〇〇点の収入である。
ということは、点差は……六四〇〇〇点分つまる。
「逆転だあ!!」
「そうだ。くくくくっ」
陣内も楽しそうに、笑っていた。
「では、この土地の権利書は返してもらうか」
「てっめーーーー、このまま帰れるとおもってんのかあーーー」
ヤクザが入り口を固める。どうやら、ただでは帰してくれそうにない。
またまた、一触即発の事態である。宗介が懐のグロック19に手を伸ばす。
「やめねーか。勝負は、兄ちゃんらの勝ちだ。帰してやんな」
「ですが……それでは……」
「あんっ、文句があるのか。ぶっ殺すぞ……」
睨み一発。ヤクザが静かになる。
「じゃあね。陣内さん、ありがと」
「おうっ。じょーちゃんも気をつけな」
そして、三人は部屋を後にした。
「今回は、たまたま運が悪かっただけで……」
「どっちにしろ、てめーらは死んでんだよ。黒服の小僧の手を開けてみろや」
ヤクザの一人が、伏せてあった宗介の牌を順々に開けていく。
「大三元、一、四萬待ち……」
「だろ、どっちにしろ負けてたんだよ。おめーらは……」
さすがに、顔色が悪くなる。
「じゃあな。あの三人には、手を出すなよ」


三人は歓楽街を歩いてた。すでに、道端には怪しげな店の呼び込みが、客引きをはじめていた。
「先輩。もうこれっきりにして下さいね。こんな危ないこと」
「ふむ。君らには、迷惑をかけたみたいだな」
「いえ。閣下のお役に立てて幸いです」
この盲信の徒め。かなめは、宗介のことをジロッ睨んだが、その意図は伝わらなかったらしい。
もう、この鈍感男め。
「でも、先輩。その四〇〇万どうしたんですか?」
そう言えば、そうだ。あんな大金、まさか先輩の貯金でもあるまいし。気になる。
「ああ、C会計の一部だ」
「一つ質問していいですか?」
「なんだね」
「C会計って、全部でいくらぐらいあるんですか?」
「それは、秘密だ」
C会計――生徒会の裏資金だ。
林水先輩が一年で会計をやっていた時、一〇倍に増やしたと言われる謎の資金。
一体どうやって増やしたのか、それさえ秘密だ。今回は、その一端を垣間みたが、まだまだ謎だ。
案外、ギャンブルで増やしたのかもしれない。
かなめがそんなことを考えていると、後ろから車のクラクションが聞こえてきた。
振り返ると、真っ黒な高級車ベンツである。そして、三人に横付けすると、陣内が顔を覗かせた。
「おい、ガキども、送ってやる。乗ってきな」
三人は素直にベンツに乗り込んだ。
「しかし、まあ、兄ちゃんらもだが、じょーちゃんも、面白いなあ」
「そうかな、あはははは」
かなめは照れくさくなって、笑った。だが、先輩と宗介は押し黙ったままだ。
「なあ、白服の兄ちゃん。どさくさに紛れて拾っただろ?」
ハンドルを握りながら、林水先輩に話しかけてきた。
「ふっ、目には目を、イカサマにはイカサマをだよ……」
「ヤクザ相手に、大した悪党っぷりだよ。兄ちゃん」
陣内は、その答えに苦笑が隠せないようだった。
「ちょっとぉ、先輩。そんなことしてたんですか?」
「見事です。閣下」
そして、車は泉川駅で止まった。三人は、そこで車から降りた。
「あっ、忘れてた。兄ちゃんら、名前はなんてんだ?」
「陣代高等学校三年、生徒会長の林水敦信」
「同じく、二年、安全保障問題担当・生徒会長補佐官の相良宗介」
「二年、生徒会副会長の千鳥かなめよ」
陣内は、陣代の名前を聞いた時、ほーっという表情を浮かべたが、それが何を意味するかまではわからなかった。
「なあ、あんたら卒業したら、うちの組に就職しねえか。幹部待遇で雇ってやるよ。特に、林水だっけ、あんたなら大物になれる。間違いねえ、どうだ?」
「考えておきます」
おいおい。本気か?
「相良は、どうだ。武闘派で明日から即活躍できるぞ?」
「その気はない」
陣内の申し出をばっさり切り捨てる。
「じゃあ、じょーちゃんは?」
「ははっ、遠慮しときます」
陣内は、ふっやっぱりか、という表情を浮かべた。
それもそうだ、こんな街頭でヤクザが高校生を勧誘しているなんて聞いたことがない。
「じゃあな、じょーちゃん。今度、暇があったら遊ぼうや」
「うん。陣内さんも気を付けて」
かなめは、大きく手を振った。
それにしても、ヤクザに勧誘される私達って……。


それから、三人は学校の方に向って歩いていた。かなめは制服を置いたままだし、宗介は鞄が置いたままになっていた。
林水先輩は、さっそく土地の権利書を返してくるそうだ。
「あーっ、今日は疲れたな」
かなめは、大きく背伸びをした。ずっと緊張しっぱなしで体が痛い。
「千鳥くん。それにしても、君達はどうして私のことを知っていたんだ?」
「えっ、それは……」
答えに困る。そのことは、日下部侠也には口止めされている。
「そうか、日下部か。フッ、今度、礼でも言っておくか。では、私はこれで」
「閣下。お気をつけて」
「二人とも今日は本当に助かったよ。ありがとう」
「どう致しまして」
林水先輩は、駄菓子屋の方へと歩いていった。その後ろ姿を、二人はジッと見送っていた。
真赤な夕日の向こうに、影が小さくなる。
「でも、良かった。先輩が悪いことしてなくてね」
「ふむ、全くだ。やはり閣下は正義の人だった」
「ははっ、そうだね」
やはり、林水先輩は「変人」であっても、「悪人」じゃなかった。宗介なんか、いたく感激していたようだ。
これで、ますます先輩への信仰度がアップしてしまうにちがいない。
だが、宗介はその言葉とは裏腹に、難しそうな顔をしていた。
「どうしたのよ?」
「ふむ。少し、気になることがあってな」
顎に手を当て、何かを考えているようだった。


その日の深夜、雀荘「伏魔殿」には数人のヤクザが終結していた。中には、ピリピリした空気が流れていた。
「おい、陣内さんに手を出すなって言われただろ」
「はっ、あいつは俺らの組の人間じゃねえ。知ったことか。高校生のガキに舐められたっていう噂がたってみろ。上の人間から、俺らが潰される」
たしかに、高校生相手に失態を演じたなんてバレれば、指が飛ぶ。下手すりゃ、首から上が飛ぶ。
「な〜に、殺しゃしねーよ。ちょっと脅して、金と権利書を戴いてくるんだよ……」
ヤクザが黒い計画に花を咲かしている時だった。
入り口のドアが派手に吹き飛んだ。宗介が昼間破壊したドアだ。
「ああーーー、なんや、われ!」
「てめー、どこの組の回し者やぁ!!」
だが、その姿にヤクザは目を疑う。
入ってきたのは、あのボン太くんだった。大きな頭、短い手足、そして何よりその愛くるしい表情がたまらない。くりくりとした大きな目が、チャームポイントだ。
『ふもっふ(訳:屑め……)』
「ああ、頭勝ち割るぞおおおーー」
「それ、脱げやあっ」
ヤクザ達が一斉に、奇声を上げ威嚇をはじめる。
『ふもっふ、ふもっふ、もふ(訳:やはり、貴様らのような屑は、のさばらせておけん)』
「簀巻きにして、海に沈めてほしいのかよー」
「何とか、言えよぉ!!」
悲しいかな、全然会話が噛み合っていない……。というか、絶対に無理がある。
着ぐるみ相手に凄むヤクザ……何だか、不思議な光景である。
『ふもっふ(訳:かかってこい)』
ボン太くん――宗介が、散弾銃をかまえる。そして、手近なヤクザにゴム・スタン弾を叩き込む。
殺傷力はないが、ヘビー級ボクサーのパンチ力くらいの威力はある。
鳩尾に直撃を受け、もんどりうって倒れる。ピクピクと痙攣している……。
「てめー、ぶっ殺してやらあ」
ヤクザがドスを抜いて刺した。だが、ドスは全然刺さらない。
『ふもっふ(訳:無駄だ。そんなナマクラでは、この装甲はつらぬけん)』
再び、散弾銃が火を吹く。ゴム・スタン弾を頭に受けて昏倒する。
(ふむ。今回は、良好のようだな)
宗介は、前回の失敗を教訓に新たな改良を施していた。機動性を考え、頭部、腕部、脚部の可動範囲を大幅に広げた。
さらに、元の形を損なうことなく、全体的に軽量化を計った。今なら、後ろを振り向くことさえ可能だ。
今回は、いわば「ボン太くんマーク3、高機動型」だ。
ボン太くんが、走る、飛ぶ。そして、散弾銃を撃つ。その姿には、感動すら覚える。
「死ねやぁあーー!!」
ヤクザの一人が、チャカを抜く。どうやら、我慢の限界を超えたらしい。だが、ボン太くんは冷静だ。
弾を避けると、催涙弾を投げつける。ブッシューという音がして、室内に催涙ガスが充満する。
「げほっお……ゴホッ……、てめーは、なんなんだよ」
涙を流しながら呟く。その姿には、最早余裕は全然感じられない。
『もふ(訳:安全保証問題担当・生徒会長補佐官だ)』
当然ながら、ヤクザには「もふもふっ」としか聞こえない。そして、最後にとどめの一撃を放つ。
頬にゴム・スタン弾の直撃を受けて、昏倒した。事務所には、全員が床に這いつくばっていた。
『ふもっふ(訳:最後の仕上げだ……)』
そう呟くと、懐から何かの袋を取り出した。


日曜日を挟んで、月曜日となった。今日は、あの駄菓子屋「陣代亭」が店を開いていた。
どうやら、ヤクザからの報復もないみたいだった。かなめは、ほっと胸を撫で下ろして登校した。
「……ねえ、カナちゃん」
「んっ、どうしたの。キョーコ?」
教室に入ると、常盤恭子が心配そうな顔で近付いてきた。なんだが、ひどく心配そうな顔だ。
「あのね、聞きにくいんだけど……。カナちゃん、ヤクザの人と付き合ってる?」
ガクッ。こけそうになる。
「はははははっ、まさか、そんなことないわよ」
「……なら、いいんだけど。別のクラスの子がね、そんなこと言ってたから……。カナちゃんが、ヤクザのベンツから降りてきた所、見たって……」
どうやら、陣内に送ってもらったのを生徒の誰かが見てたらしい。しかも、林水先輩や宗介のことは、見事に抜けてる。
恭子の話によれば、いわく、
『千鳥は、ヤクザの女だ』
いわく、
『千鳥副会長は、実はヤクザの隠し子だ』
いわく、
『千鳥副会長は、事故に見せ掛けて何人か殺しているらしい……』
等々。とんでもない噂が蔓延しているらしい。しかし、事実は話せない。それから、しばらくの間、千鳥かなめに黒い噂が付きまとうことになった。
「あーっ、もうやんなっちゃう。ねえ、ソースケ」
「ち、千鳥。まさか、君は……」
「あんたが信じるなぁ!!」
かなめのハリセンが宗介の後頭部をはたき倒していた。
その頃、生徒会室では、林水先輩は新聞を読んでいた。
とそこに、お蓮さんがお茶を煎れてきた。
「会長。何を御覧になっているのですか?」
「ああ。これだよ」
それは、取るに足らない三面記事の一つであった。その見出しに、目を向ける。
「雀荘『伏魔殿』で、乱闘。重傷者多数。現場から、拳銃と大量の麻薬を押収……ですか?」
更に詳しく読む。
日曜の午前二時、麻雀荘「伏魔殿」において、○×組の構成員を重傷で発見。
なお、現場から拳銃とコカイン1kgを押収した。
警察では、敵対する組織との抗争ではないかと見て警戒を強めている。
「うむ。世の中も物騒になったものだ」
「そうですね」
そう言うと、お蓮さんの煎れてくれたお茶を一口啜った。
「ふむ。美味いな。さすがは、美樹原くん。見事な腕前だ」
「ありがとう御座います」
お蓮さんは、その言葉に嬉しそうに頬を染めていた。
そして、今日も陣代高校の平和な一日が始まろうとしていた。


その頃、警察の留置場では。
「なあ、刑事さん。信じてくれよ、ボン太くんが……ボン太くんが……」
顔を腫らしたヤクザが叫んでいる。
「どうします。あいつら?」
「ほっとけ、どうせクスリでもきめてたんだろ……」
留置場には、いつまでもヤクザの叫び声が木霊していた。

<ポーカーフェイスの賭博師(ギャンブラー) 終わり>


あとがきという名のおまけ

【登場人物座談会特別編:卓を囲む者】

「閣下。見事な御活躍、感服いたしました」
「いや、相良くんもなかなかのものだよ」
眼鏡の奥の瞳がキラッと光る。どうやら、二人の奇才には相通ずるものがあるらしい。女のかなめには、理解できない。
「いやー、でも本当心配しましたよ。一時は、どうなることかと……」
「そんなことがあったなんて……わたくし、まったく存じ上げませんでした……」
少し寂しそうな表情をする。
「(わわっ、お蓮さんが落ち込んでいる。なんとかしないと……)ははっ、先輩はお蓮さんに心配かけないようにと思ってたんでしょ。そうですね!!」
とっさにフォローするかなめ。偉いぞ。
「うむ。その通りだ。美樹原くんには、心配をかけたくなかったんでね」
「会長」
ポッと頬を赤らめる。はーっ、恋する乙女は無敵である。
「じゃあ、あたしはいいってことですか?」
「適材適所ということだよ」
その言葉に、釈然としないものを感じる。だが、まあ良しとしよう。
「ですが、会長。今回は、これまでとは趣向が変わったような気がします」
「そうよね、麻雀の話だし。麻雀に興味のない人には、読みづらいかも」
「いえ、わたくしは会長の御活躍を拝見出来ただけでも……その……嬉しく思います……」
その言葉に、宗介とかなめがお蓮さんの方をジッと見つめる。
「あらっ、わたくしったら、何を言ってるんでしょう」
頬に手を当て、真赤になるお蓮さん。う〜ん、可愛いぞ。
「でも、宗介が麻雀できるなんて意外だなあ」
「そうか。千鳥。麻雀とは、実に興味深いゲームだ」
「どうしてよ?」
「あの張り詰めた緊張感。まるで、地雷原を行軍しているかのようだ。それに、爆弾の解体にも似ている」
「……地雷に爆弾ですか」
「そうだ。牌を捨てる瞬間に走る緊張感が、それに似ている」
「はあ」
かなめは、地雷原を歩いたこともないし、爆弾の解体もしたことはない。まあ、当たり前だけど。だから、宗介の喩えは、よく理解できない。
「さすが、相良くん。的を得た見事な表現だよ」
「ありがとう御座います。閣下」
四人は麻雀の卓を囲んでいた。かなめは、あの後麻雀にはまってしまった。そして、今は生徒会室に卓を持ち込んで、打っていた。でも、お蓮さんが麻雀を知っているのには驚いた。お蓮さんは、こういう世界とは、全然無関係だと思っていた。
『やあ、諸君。元気だったかな』
生徒会室に作者が入ってきた。いつもながら、唐突である。
「ようこそ、どうぞこちらへ」
お蓮さんが、椅子を用意してくれる。作者は、それに座る。
『今回は、林水君が大活躍だったみたいだな。おめでとう』
「いえ、みんなの力があったからこその勝利です」
『ほーっ、謙遜することないじゃないか。林水君』
「いえ、事実ですよ。私一人の力など、大したことはない。千鳥くんがいて、相良くんがいる。そして、美樹原くんがいる。だからこそ、私は安心して力を発揮することができるんです」
その言葉に、またまた頬を染めるお蓮さん。
『君がそう言うなら、そういうことにしとこうか。では、そろそろお暇するよ』
そのまま、生徒会室を後にする作者。
「へえー、先輩いいこと言いますね」
かなめが牌を捨てる。
「あっ、すみません。千鳥さん。それロンです」
「ふむ。自分もだ」
「すまない、私もだよ」
全員が牌を倒す。たしかに、全員のロン牌である。
「ちょっとーー、何でよ。ひどいじゃない」
今日の麻雀は、お昼御飯がかかっている。負けた人が学食で奢ることになっている。だから、絶対に負けられない。
「ソースケ、それ引っ込めなさいよ」
「それは、出来ん。勝負の世界は非情なのだ」

東さん。有難うございますm(_ _)m。一月かからず次回作とは。このスピード。見習いたいものである。
ここで、東さんからのコメントを発表いたします。

「今回のコンセプトは、ずばり『水戸黄門』です。強きを挫き、弱きを助ける閣下の活躍を描いた話です。
もちろんキャスティングは、黄門さん:閣下、助さん:かなめ、角さん:宗介、です。
お蓮さんは、どうなってるの?という話もあります。やっぱりかげろうお銀or風車の矢七かな(←強引過ぎる)。
物語のアイデアは、閣下が麻雀したら、面白いに違いない。そこからできた作品です。結果として、今回はラブのない話になりましたが。
その他に、陣内というヤクザ。フルネームは、陣内高牙(じんない・こうが)です。本編では、下の名前は出てきませんでしたが。いつか、また登場するかもしれません」

との事でした。確かに閣下には頭脳戦が良く似合う。
しかし、この話、麻雀判らない人には何が何だか良く判らないかもしれませんね。管理人は良く判りますから結構楽しかったですけど。
お笑いでオトすのなら、座談会の方をオチにしても良かったかもしれませんね。
少し、説明や読みがなをちょこちょこと付け加えた箇所があります。東さん。どうかご了承を。
――管理人より。


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